ついに東京で2020年のオリンピックが開催されることが決定した。我々の業界、大変なことになるかもしれない、というちょっとした恐怖心と、この熱にしばらく浮かされても良いかな、という高揚感、相半ばなのは私だけでは無いだろう。

 オリンピック施設の計画はほとんど決定している。2020年の開催に相応しい、将来と地域を見越した施設にしていくことは当然ながら、過去のオリンピック施設を振り返って学びを得ることは決して悪いことではないはずだ。

ロンドン五輪「アクアティクス・センター」

 2020年東京オリンピックのメーンスタジアムにもなる新国立競技場の設計者は、ザハ・ハディド氏である。彼女は2012年のロンドン・オリンピックでも、ある施設の設計を行った――。アクアティクス・センター、水泳競技場である。

ロンドンオリンピック期間中のアクアティクス・センターの外観。プール設計の専門家、Devin Consulting(デヴィン・コンサルティング)と協働し、水使用の削減にも努めた。プールの戻り水をトイレ水洗に使用、さらにプールのフィルターの洗浄水を再利用するなどし、上水の代替率で40%を達成している。白く跳ね上がっている部分が仮設(写真:Arup/Thomas Graham)

 50mの競泳用プール、25mの飛び込み競技用プール、50mのウォームアップ用プールの3つのプールから成るこの施設は、ロンドンにおいて、オリンピック基準を満たす初の水泳競技場であるばかりでなく、オリンピック後は地域に還元され資産となる。実はこの寄贈が建物の第一義であり、オリンピックのための観客増への対応は仮設で補うというプログラムであった。

 オリンピック開催時には、観客1万7500人を収容、仮設部分を除く屋根面積だけでも1万1000m2の巨大施設である。

プールというと、常に音響の問題を抱えるが、この施設ではフローティング木天井を採用し、それが音響に効果的であった。ラウドスピーカーをこの天井材や照明器具で隠しながら配置している(写真:Arup/Thomas Graham)