1895年、A.W.ワイズマンによって、ネオ・ルネサンス様式で設計されたアムステルダム市立近代美術館。赤レンガに白い砂岩の帯がめぐり、頂部にはピラミッドのような形の小塔を冠している。ここはオランダの近代美術のメッカで、ゴッホをはじめ、ピカソやモンドリアンの作品を擁している。

 2012年9月、この美術館は再開館を果たした。約9年間の閉館期間を経て改修・増築を終え、オランダのベアトリクス女王を迎えて式典を終えた。ベンサム・クローウェルが意匠設計、アラップが構造エンジニアリングおよび照明計画を行った。

近代美術館はミュージアム・スクエアの一角にあり、ゴッホ美術館、アムステルダム国立美術館、コンセルトヘボウ(コンサートホール)といった華やかな雰囲気の施設に隣接している(写真:John Lewis Marshall)

 第一印象は、「巨大なユニットバス」。実際に、すでに「バスタブ」の愛称が付いているそうだ。

 増築部分は、地下構造とその上に浮かぶソリッドな上部構造で構成されている。1階はガラスで覆われているため、大きなマッスが“宙に浮いている”かのように見える。これは、美術館前の広場を増築部の屋内にも取りこみ、ガラス越しに既存の美術館を覗き見ることができる、という意図である。

 平面にして約100m x 25mのこの上部構造は、わずか6か所で支持されるメガストラクチャーとなっている。5本の鉄骨柱と1か所の鉄筋コンクリート壁だけが支持部材である。キャノピー部分は約12.5m張り出したキャンチレバーで、鉄骨梁端部の梁せいは約1m。桁は巨大なトラスで、架構だけを見るとまるで橋梁のようである。

浮かんだ上部構造の内部は2層に分かれており、下層は巨大な展示空間とホール、上層はオフィスとなっている。1階にはインフォメーションセンター、図書館、ショップ、レストランが配置されており、美術館の新しいエントランスとしての機能も担う(写真:Arup)

 このメガストラクチャーを覆っているのが、日本の帝人グループが開発した素材で、アラミド繊維と炭素繊維による複合素材である。アラミド繊維は高い耐熱性があり、アスベストの代替品として使用されたり、ガスケットや防弾ベストにも使われる。炭素繊維は金属に代わる新素材として、産業分野などで広く使われるようになったが、この複合素材が建造物に使用されるのは世界初とのこと。表層は飛行機と同じ塗装がされているという。