グリーンビルディング(環境配慮型建物)の性能を十分に発揮させるためには、テナントの協力が欠かせない。連載第10回は、グリーンビルにおけるビルオーナーとテナントとの賃貸借契約「グリーンリース」について解説する。

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<問>グリーンリースという言葉を耳にしますが、グリーンビルディングと関係あるのですか。

<答>グリーンリースとは、環境に優しい建物を運用するために必要な、オーナー・テナント双方の責任と義務を定めた賃貸借契約です。オーナーとテナントの両方に、グリーンビルディングに取り組むインセンティブ(動機)が働きやすくすることを目指して提唱されました。グリーンリースが求められる理由は、主に二つあります。

 第1は、建物の高い環境性能を維持して発揮するために、要求される様々な約束事をオーナー・テナント間で取り決める必要があるからです。

 建物は、適切に運用されなければ設計されたとおりの性能を発揮しません。一般的に、グリーンビルディングを新しく建てるのは比較的容易ですが、その発揮すべき性能を引き出して効果を得ることは難しいのです。期待された効果が得られなければ、投資家やテナントからの評価が下がり、グリーンビルディングとしての価値が低下します。グリーンビルディングの運用には、建物を管理する側だけでなく、建物使用者であるテナントの協力が不可欠です。

 第2は、グリーンビルディング化のための投資費用を負担する側(オーナーや投資家)と、その投資効果を享受する側(テナント)が異なることによる不利益を、最小にする必要があるからです。

 オーナーや投資家は、省エネ対策や水・廃棄物費用削減などのための設備投資費用の負担に、必ずしも積極的ではありません。設備投資による効果はテナントが享受しても、投資をしたオーナーや投資家は、その費用を回収できないことが多いのです。

 一方テナントも、設備投資費用を負担することに消極的です。一般的に、グリーンビルディング化に要した費用の回収は、長きにわたります。数十年という契約期間が珍しくなかった欧米の市場でも、最近では契約期間が短期化し、テナントが費用を負担することのメリットを感じづらくなっています。

 グリーンリースには、費用負担と利益配分、エネルギーや水の削減目標値、改修した環境配慮設備に関する原状回復義務の免除、罰則などをはじめとした様々な項目が含まれます。オーナーやテナントの責任と義務を賃貸借契約書で明確化することにより、双方が協力して環境に優しい建物の創造と維持に努めるための動機づけの要因となります。

 グリーンリースを最初に実用化したのはオーストラリアです。その後、イギリス、アメリカでも普及しています。グリーンリースは比較的新しい考え方で、その効果は未知数です。しかし、各国でCO2排出量削減の規制が厳しくなるなか、グリーンリースの普及と効果に期待が寄せられています。

(村上淑子=イー・アール・エス グリーンビル研究チーム)


<これまでの連載>
1)グリーンビルディングとは何か
2)注目浴びるグリーンビルディング
3)グリーンビルディングの先進国
4)主要国のグリーンビルディング評価
5)日本のグリーンビルディング評価
6)グリーンビルディング評価の課題
7)グリ-ンビルディングであることのメリット
8)グリーンビルディングはどれくらいあるか
9)既存ビルの環境性能を評価するには
10)グリーンリースとは何か
11)グリーンビルディングの不動産価値
12)建物の省エネ化を促進する米国の取り組み

イー・アール・エス グリーンビル研究チーム

イー・アール・エスは1998年に鹿島と応用地質によって設立されたリスクマネジメントサービスを提供する会社。エンジニアリングレポート(建物状況調査報告書)作成のほか、環境リスク、自然災害リスクの評価・診断などを得意とする。グリーンビル研究チームは建物の環境リスクを研究することを目的に2008年に発足した。環境部の中村直器氏、村上淑子氏、デューデリジェンス部の三嶋滋憲氏、伊藤健司氏、横山博行氏ら約10人からなる。同社のウェブサイトとメールマガジンで、グリーンビルディングに関する先端情報を発信している。