私は12歳で盗っ人の道に入り、30歳代半ばまで“稼業”としていた。その間3回つかまり、延べ10年以上にわたって服役した。足を洗って30年たつが、当時のことはいまでも鮮明に覚えている。

 ひょんなことから数年前、警視庁のある警視に防犯活動への協力を要請された。以来少しずつ自分の経験を話すようになってきた。日経ホームビルダーにも2005年1月号の特集で協力している。過去の体験を書きつづったことはこれまでなかったが、どうしてもと頼まれたので、印象に残るいくつかを告白することにした。

 面格子をはずして住宅に侵入したことは何度もある。そのなかで、いまでも脳裏にこびり付いているのは、石川県羽咋市の戸建て住宅に、深夜0時ごろ決行した忍び込みだ。うかつにも、若い女性が入浴している最中の浴室に侵入してしまったのだ。

 浴室や寝室の電気が消えてしばらくたったので家の人が寝静まったと思い、浴室の面格子をはずして窓をゆっくり開けた。浴室に右足を踏み込んだとたん、「キャー!」という叫び声とともに、浴槽から人影が飛び上がった。私はあわてて顔を隠し、一目散に立ち去ったので、つかまらずに済んだ。相手が男だったらと想像すると、いまでも震えが走る。

ドライバーで面格子のビスを緩めて手で引っ張る

 この家で浴室に侵入口の狙いを定めたのは、一番人目に付かない場所にあり、窓が開いたままだったからだ。面格子は付いていたが、事前の下調べで簡単に取りはずせるタイプであることを確認していた。お勝手にも面格子付きの窓があり、やはり開いたままだったが、小さな電球が点灯していたので避けることにした。

 面格子は縦組みで、上下6カ所をビスで留められていた。そのうちの2~3カ所をマイナスドライバーで緩めた後、手で引っぱって取りはずした。かかったのは1~2分だ。このときはマイナスドライバーを使ったが、細長い棒状の金ノコや金やすりで格子を切ることもあった。

 面格子はビスを数カ所はずせば、手で曲げたり引き抜いたりできるものが多かった。壊すのは容易だと考えていた。音が立たない点も都合がよかった。私は細身の体型だったので、格子を1本はずしただけで侵入できたこともある。

うかつにも、若い女性が入浴している最中の浴室に侵入してしまった(イラスト:山井淳一)
うかつにも、若い女性が入浴している最中の浴室に侵入してしまった(イラスト:山井淳一)

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