建築家・手塚貴晴氏は、木を使った建築を数多く手掛けている。きっかけは、ふじようちえん(東京都立川市)。鉄骨造の仕上げにふんだんに木を使ったことで、園児たちが生き生きと遊ぶ空間となり、木造の依頼が相次いだ。手塚氏に木の建築の魅力について語ってもらった。

手塚 貴晴氏(建築家、手塚建築研究所、東京都市大学教授)

 東日本大震災で津波の被害に見舞われた宮城県南三陸町には、杉の並木があった。1611年の慶長三陸地震の際、大津波の被害に遭った後に植えられた杉だという。400年前のご先祖様が植えた杉は、幹まわりが3mを超える巨大な木に成長した。だが、今回の津波の塩害で立ち枯れてしまう運命にあった。こうした塩害にあった木は、伐採してバイオマスで燃やされてしまうということだった。

400年前の杉を使い未来にメッセージを繋げる

 最北の回廊型の寺院があって、そこの幼稚園が津波で流されてしまった。大雄寺の参道の杉並木も、津波被害に遭ったものだったので「ぜひ、この杉を使って幼稚園をつくりましょう」と提案した。樹齢380年くらいの杉である。

 木の重量だけで比較すると、屋久杉よりも重い、たいへんな大きさだ。ただ、製材して使える部分だけにすると600mm角と意外に小さい。とはいえ、低層の建物を建てるには十分に太い材料が取れた。

 生木は乾くと曲がる。しかし、これだけ大きな木材では、通常ソリ防止のために行う「背割り」はできない。そこで、「芯抜き」という、昔から使われている手法を取った。木材の中心に穴を抜いて、そこから乾燥させるものだ。

 構造としては、上と下の材を組み合わせながら、楔で留めるという、古くて新しい手法を使った。金物をできるだけ使わない配慮をしている。また、構造強度を確かめるために、構造設計者のアドバイスを得ながら、実際の材で試験体をつくっていくつか壊してみながら、データを取り安全性を確認した。