開閉式ルーバーや可動屋根など、キネティック(動的な)建築が注目されるなか、空間そのものが動く観覧車は特異な位置付けにある。高度なエンジニアリングが要求され、それが翻ってさらなる創造性を刺激することになる。

 米国ラスベガスに2014年3月、「ハイローラー」と名付けられた高さ550フィート(167.6m)の世界一背の高い観覧車が登場した。これまではシンガポール・フライヤー(高さ165m)が世界で最も高く、次いで中国の南昌之星(同160m)、英国のロンドン・アイ(同135m)という順番だった。

 記録を塗り替えたハイローラーには、40人乗りのキャビン(かご)が28個付く。一度に最大1120人を乗せ、30分かけて1周する。

 基本計画はヘッテマ・グループ、実施設計はクライ・ジュバが手掛けた。どちらも商業系の施設を得意とする設計事務所だ。アラップは構造設計と建築設備設計、音響設計、火災安全設計を担当した。

遠くの山並みも望むことができる世界最大の観覧車「ハイローラー」。シンガポール・フライヤーやロンドン・アイは水辺に建設され、周囲に視界を遮るものが少ないのに対し、ハイローラーは高密度な街中に建てられている(写真:Elisabeth de Kleer)

 ラスベガスには、全長6.8kmほどの大通り内に「ラスベガス・ストリップ」と呼ばれる区間があり、沿道には街の象徴ともいえるカジノや巨大ホテルが並ぶ。ハイローラーはその一角に誕生したアトラクションだ。発注者であるカジノホテルチェーンのシーザーズ・エンターテインメントが、ラスベガス・ストリップの象徴となるものを新たにつくりたいと希望して実現した。

 観覧車は、立地によっては高い収益を期待できる。ハイローラーは高密度な街中に建てられ、周囲の建物やネオンを高い位置から眺めるのも一興になるだろうと考えられた。また、このエリアには年間2000万人もの観光客が訪れているという事実も、採算確保の自信となった。