「建物に重大な瑕疵があるために建て替えざるを得ない場合、発注者は請負人に対して、建て替え費用相当額の損害賠償を請求できる」という最高裁判決が2002年9月24日に出た。民法635条のただし書きでは、請負契約は「建物その他土地の工作物については瑕疵を理由に解除することができない」と条件を付けている。この趣旨に照らして、建て替え費用相当額の請求が許されるかどうかが争われた。

 発注者Xは1995年10月、設計事務所Zとの間で、設計図書の作成や確認申請の代行手続き、工事監理業務を委託する契約を締結した。委託料は361万1211円。木造ステンレス鋼板葺き2階建ての3世帯住宅だ。

 96年2月、Xは建設会社Y1との間で、Zが作成した設計図書に基づいて建物を建築する請負契約を締結した。請負代金は4352万2000円。完成予定は8月31日だったが、工事は遅れて、Xは正式な完成引き渡しを待たずに9月28日に入居した。

 Xは、建物には多くの瑕疵があり、改修工事費などの損害を被ったと主張して98年、ZとY1のほか、それぞれY1の取締役である副社長Y2、専務Y3、建築部長Y4を相手に、損害賠償を求めて提訴した。

 請求額は損害金総額4749万7944円から、Y1への工事代金の未払い分829万2603円と、Zへの未払い代金72万8033円の合計902万636円を控除した3847万7308円だった。

 Xは、多くの瑕疵のなかで、構造上、施工上のとりわけ重要な欠陥(下記の表)を挙げ、「全体を解体してつくり直す必要がある」と主張した。

 請負人側は「材料や施工方法は通常以上のものを用いており、建築基準法の水準を2~3倍上回る安全率を考慮した構造となっている」「原告の指摘に対してはその都度、対応してきた」「建て替えをしなければ安全性が確保されないものではない」などと反論した。

 設計者Zは「瑕疵があることは認めるが、施工技術の良しあしは施工者の監督の問題で、設計監理者の及ばないところであり、設計者の責任ではない」と反論した。

瑕疵を巡る請負人側の反論と東京高裁の認定内容
建築主が主張した欠陥個所に関する請負人側の反論 東京高裁の認定内容
(1)基礎の欠陥:設計図書に記載されている基礎が一部、ないことは認める。しかし、その部分は長さが短く、構造上の影響はない 設計図書に記載されている基礎の立ち上がり部分のうち3カ所が欠落している。基礎と土台がずれているところが27カ所あって、ずれ幅は最大で40mmに達している。べた基礎外周部の高さは設計図書では600mmとなっているが、現実には460~485mmしかない。べた基礎のコンクリートにひび割れが見られる
(2)土台と基礎の間のすき間:工事の途中で、基礎と土台の間にすき間が生じた部分にはモルタルを注入して多くは解消した。そもそも、土台が基礎に完全に緊結されなければならないものではない 土台と基礎の間に大きくすき間の空いた部分が随所に見られ、すき間に木片をかませただけのところもある。すき間のあるところで土台を継いでいるところもある
(3)火打ち土台の欠陥:べた基礎の場合には、火打ち土台はほとんど必要がない 設計図書で設置すべきとされている部分に火打ち土台が設置されていないところが1カ所ある。火打ち土台はあるものの、寸法が不足し、土台の溝に届いていない部分が1カ所ある
(4)柱の寸法足らず:建築主の指摘によって、ほとんど取り替えられている 母屋、小屋束、梁、柱、間柱の寸法が短いため、ほぞがほぞ穴に完全に入っていない個所が随所に見られる。寸法足らずの柱と横架材とのすき間に木片や板を挟んですき間を埋めている個所や、羽子板ボルトの取り付け位置が不良である個所もある
(5)横架材の組み込み、その他の仕口不良:指摘される部分は、建物の構造の根本的な強度には影響のない部分である
(6)火打ち梁の仕口の施工不良:住宅金融公庫の融資住宅だが、公庫基準に合致しない部分があったとしても、直ちに施工不良となるわけではない 公庫仕様書によれば、火打ち梁の仕口は、かたぎ大入れで施工することとされている。しかし、火打ち梁が横架材に突き合わせ状態で取り付けられているに過ぎない個所がある
(7)筋交いの欠陥:かみ合わせのない部分には必要な補強金物が用いられている 筋交いのうち3本は、著しく寸法が不足しており、そのすき間に木片を挟んだりしている。筋交いの仕口が単に突き合わせのうえ、くぎ付けしてあるだけで補強金物のない個所、補強金物があってもすき間があったり補強金物が裏返しに取り付けられている個所がある