カタルーニャの州都バルセロナは、1992年夏季オリンピックの開催前の建設ラッシュ時にデザイン取材のきっかけを作り、以後、私が最もリピート訪問している都市の一つである。

 ヨーロッパにいるとEU(欧州連合)という政治・経済の包括的な視野からなのか、スペインの動向に関するニュースは、日本にいるときよりもはるかに多く耳に入ってくる。金融危機以後の最近の情報はポシティブではないようだが、バルセロナの街には相変わらずの活気とセンスある都市デザインの魅力が感じられる。

 ABaC(アバック)は市の中心であるカタルーニャ広場から地下鉄で10数分ほどの、高台の高級住宅地として知られるティビダボ地区にオープンしたブティックホテルである。駅のエレベーターを上がったところのケネディ・スクエアに面している。シェフのシャビエル・ペリサー(Xavier Pellicer)が腕をふるう、ミシュラン二つ星を獲得したレストランがあり、いわばオーベルジュといった感じだ。

庭から見る正面のホテル棟と右のレストラン (写真:武藤 聖一)

 ホテルといっても一般のホテルとは違い、セキュリティがしっかり管理されているため、出入りはチェックされている。

 1920年代に建造されたこのタウンハウスには、16ミリ映画の制作と自演でスペインでは著名なマドロニータ・アンドリュー(Madronita Andreu、1895-1982)とそのファミリーが住んでいた。歴史的建造物に指定されているため、旧ハウスは全面改装し、庭園には新たにレストラン棟が建築された。両者はガラス張りの回廊でジョイントされている。敷地に高低差があるため、エントランスを入ると緩やかな下りのスロープでUタウンしてレセプションにアプローチする。ゆとりの演出は見事だ。

スロープでUターンしてレセプションへと続くアプローチ (写真:武藤 聖一)

エントランスロビーから見るレセプション (写真:武藤 聖一)

客室のロビー。ブルーとブラウンでパステル風にコーディネートした窓際のソファ (写真:武藤 聖一)

ロビーのソファに近接 (写真:武藤 聖一)