先週(2015年5月第一週)、「New York Times」で非常に感心する記事を見つけた。この記事は、二つの点でパワフルだと思った。一つはその内容。ニューヨークのネイルサロンでの悲惨な職場環境を、13カ月に渡る調査で明らかにした。二つめは公開方法。ネイルサロンで働く女性が記事を読めるよう、英語に加えて韓国語、中国語、スペイン語で記事を公開したのだ。

 ここ数年、女性の爪先が美しくなっているのをご存知だろう。マニキュアやペディキュアが流行しているのだ。流行という以上に、アートの領域に達しているようなネイルデザインもある。爪先の無駄な皮膚を取り除き、美しくペイントする。それは今や、たしなみの一つというほどになっている。爪先のお手入れは、女性だけではなく、一部男性の間でも当たり前になっているようだ。

 その流行を受けて、どの国、どの都市にもネイルサロンが雨後の竹の子のように増えた。そしてその増え方が、ニューヨークでは尋常でなかったようだ。マンハッタンではどこを歩いてもネイルサロンの1軒や2軒の前を通るのだが、New York Timesが掲載した地図を見ても、その密集度がよく分かる(前編の記事「The Price of Nice Nails」)。

 その結果、サロン間の競争が激しくなった。これがマニュキュア1回当たり10ドルなどという、驚くような安価なサービスを生み出したのだ。ニューヨークのサービスの値段は、全米の平均価格の半分だという。

 ところが、そんな安価の裏では、ネイルサロンで仕事をするマニキュアリストたちを圧迫していた。ことに、マニキュアサロンというのは、アメリカに入国したばかりの移民女性たちの職場になっていることが多い。手に職がなく、他に何も仕事を見つけられないのをいいことに、オーナーたちは彼女たちが仕事を覚えるために100~200ドルの料金を課し、さらに数カ月の見習い期間は無給で働かせていると同紙は報じている。

 それだけではない。マニキュア剤の毒性は健康に悪い。実際、皮膚のトラブル、呼吸器系のトラブルだけでなく、流産、がん発病などの危険性が指摘されている。後編の記事「Perfect Nails, Poisoned Workers」によると、流産を繰り返している従業員もよくいるという。オーナーたちは、そんな危険性があっても従業員を保護せず、違法移民も多い従業員たちも訴えることができずに、悲惨な状況に甘んじているという状態だ。

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