Appleは日本にも「アジア最大級の」研究開発拠点を置くつもりだという。安倍首相が街頭演説で「アジア最大級の研究開発拠点」と口を滑らしてしまったが、現在のところその詳細は全く不明だ。「アジア最大級」というのはApple社内の研究施設としてという意味なのか、情報機器開発企業としてなのか全く明らかにはなっていない。しかし、これまで30年以上にわたってMacをだましだまし使ってきた私にとって、これほどの朗報はない。世界中で始まっているサービスが日本でだけ使えない、Siriさんは日本語でもしゃれた受け答えをしてくれるようになったものの、今度は英語がほとんど通じなくなってしまったり、Appleのマップは相変わらず情報密度が薄く、正確性にも欠ける。こんな状況が、日本に研究開発拠点ができることで少しは改善されるかも知れない。

久しぶりの日本開発拠点

 Appleはかつて日本にも開発拠点を置き、システムの日本語化、日本語入力システムの開発(ことえりなど)、日本のサードパーティ開発者への支援活動などを行ってきた。Mac誕生からホンの数年、それ以後はこれらの機能をすべて日本国外、ほとんどは米西海岸のシリコンバレーと呼ばれる地方にあるクパチーノ市の本社内に置いて活動を続けてきた。かつて日本の開発拠点で働いていた技術者は本社に集められ、厳重に機密を守られた環境の中で開発を行ってきた。

 当然、日本独特の情報機器の利用環境や日本語にまつわる諸問題、商習慣、地域のIT化状況など山積みの問題には直接触れることなく製品開発が進み、出荷が始まってみると問題が噴出するという場面も多々あった。海の中に駅があったり、歴史上重要な史跡がなかったりと散々な結果に終わったアップル純正のiOS向けマップなど、がその典型だ。ティム・クックCEO(最高経営責任者)が謝罪コメントを出し、改修を約束するも、残念ながら現在もいまだに日本地図はスカスカ、住所情報を入力しても異なる場所が表示されるなど、使えるレベルにも達していない。一般ユーザーが、数、頻度ともにこれほどまでに使うようになった製品にもかかわらず現場での実地検証テストが行われないまま出荷される製品も珍しい(図1、2)。

図1 Appleのマップで国宝建造物である「瑞巌寺」を引いたら、岐阜県にある臨済宗の寺院が出てきた。ほかの候補は示されなかった。情報はタダ入っていればいいというものではない。
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図2 Googleのマップで「瑞巌寺」を引いたら真っ先に宮城県松島にある国宝・瑞巌寺が出てきた。やはり、こっちを出してもらいたいよなあ。
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 米国本国では製品の出荷前には開発メンバーが実際の利用シーンをなぞってテストするプロセスや、その道のプロフェッショナルなユーザーに発売前の製品を実際に使ってもらいながら問題点を洗い出す作業も進められる。そのため、バーに発表前のiPhoneを落としてしまって大問題になる、といった事件も起きてしまうのだが、とにかく、そうやって実際の環境に持ち出さなければ解決すべき問題がそこに潜んでいるかどうかも確かめられない。結果、製品出荷して数100万人が使い始めると、あっちこっちから山のようにクレームが殺到してしまう。

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