この記事は日経パソコン10月8日号からの転載です。
※ 2012年10月24日、Amazon.co.jpはタブレット「Kindle Fire」と電子書籍端末の「Kindle Paperwhite」を日本国内で発売すると発表しました。詳細は下記記事をご覧ください。
アマゾンが日本国内でタブレット/電子書籍端末「Kindle」を発売
わずか1クリックで購入できる「Kindleストア」

米国で電子書籍事業をリードする米アマゾン。専用端末「Kindle」と電子書店「Kindle Store」で切り開いた強さとは何か。日本でのサービス開始を目前に控え、最新の米国事情をレポートする。

 米アマゾンと電子書籍については、最近立て続けにニュースが流れた。一つはもちろん、新型Kindle(キンドル)の発表だ。アマゾンは、電子ペーパー搭載の電子書籍リーダー「Kindle」と、汎用タブレットに近い「Kindle Fire」を発売しているが、去る9月6日には「ローラー作戦」ともいえるような多種類の新機種同時発表を敢行した。

 廉価版のKindleは69ドル、新型タブレット端末の「Kindle Fire HD」の8.9型LTE版は499ドル。その間の価格帯に電子ペーパーが白く読みやすくなった機種、Wi-Fi機能搭載機種、3G通信が可能な機種など多様なモデルを用意し、どんな財布事情の消費者にもアピールする製品を並べてみせた。アマゾンのKindleに対する意気込みがうかがわれる。

 ところが一方で、大型量販チェーンの米ウォルマートはKindleの取り扱い中止を発表。路面店を持たないアマゾンにとって小売りの販売経路がまた1つ断たれたのは痛手だ。既に量販チェーンの米ターゲットも販売を中止している。その背景には日用品販売で競合するアマゾンへの対抗意識に加えて、Kindleの低マージンがあるとされている。アマゾンは前モデルのKindle Fireを、製造コスト209ドル以上のところを10ドルも低い199ドルで販売していた。今回の新機種でも、マージンを切り詰めていることは想像に難くない。

 「安売り」のアマゾンが勝利したニュースもある。司法省が、米アップルと出版大手5社を相手取った「電子書籍の価格操作に関する訴訟」で、3社が和解したのだ。これは、アマゾンの電子書籍安売りによって印刷書籍の売り上げが下がると危惧した出版社と、2010年春のiPad発売を控えたアップルが手を組み、電子書籍の価格を一斉に押し上げたと独占禁止法違反に問われたもの。和解によって、アマゾンは再び独自の価格を設定できるようになった。

 いずれのニュースも、アマゾンの存在感や影響力の大きさを物語る。

 今や米国の消費者にとって、アマゾンやKindleは実に身近な存在になっている。オンライン書店で捉えたユーザーをそのまま書籍以外の日用品のショッピングに誘い込み、さらに電子書籍へと向かわせた。その流れは非常にスムーズだった。

買いやすさ・安さが武器

●Kindle Storeで幅広くコンテンツを販売
図1 米アマゾンが展開する電子書店「Kindle Store」。端末から小説、雑誌などの販売まで扱う商品は幅広い。取り扱い書籍は、Webの表示によれば133万冊にも上る
[画像のクリックで拡大表示]

 では、実際にKindleの読書体験とはどんなものなのか。Kindleは2007年の発売以来いくつも代替わりしてきたが、どの機種にも共通しているのは「コンテンツの買いやすさ」である。当時、先行していたソニーの「Reader」やアップルの「iPhone」がパソコンに接続しなければコンテンツを導入できなかったのに対して、Kindleは最初から通信機能を内蔵し、デバイスから直接無線で電子書籍を購入できた。これがユーザー獲得に寄与したことは間違いない。

 「買いやすさ」は最新型のKindle Fire HDにも受け継がれている。アマゾンのジェフ・ベゾスCEOは2011年、初代Kindle Fireの発表会で「皆さんはタブレット端末と呼んでいるが、私にしてみれば店頭だ」と説明した。Kindle Fire HDもアマゾンのサービスを利用する“店頭”として最適化されている。

 例えばホーム画面にまず出てくるのは、これまでに購入したコンテンツだ。画面下部には「同じ製品を買った人はこちらも買っています」というお薦めがひっきりなしに表示される。目障りだという評もあるが、情報を得るには便利な機能だ。電子書店「Kindle Store」への移行はタップ1つ。書籍に限らず、映画も音楽も雑誌も、すぐさま店頭に引っ張り出せる手軽さだ。パソコンから購入してもすぐにKindle側で表示、ダウンロードが可能になり、書籍はいったん読み始めると読んだ箇所が複数のデバイス間でシンクロされるなど、使い勝手もよく考えられている。

 そして、何と言っても、電子書籍の価格が安い。例えば新刊書なら、Kindleの電子書籍はハードカバーの3分の1以下ということも珍しくない。アマゾンはここでも身を削っての出血サービスを行っているわけだ。Kindleが伸びたのはユーザーがこれを大いに享受したからである。

 読書のための気の利いた小技も数々ある。単語をタップすれば辞書が呼び出せたり、「X-Ray」という機能で登場人物や場所などをおさらいしたりできる。オーディオブックの音声と統合させて、耳で聴きながら読み進めていく「イマーシブ・リーディング」機能にも1万5000冊のKindle書籍が対応している。

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