この記事は日経パソコン10月8日号からの転載です。

 ステージ上のスクリーンには新型のタブレット端末が大きく映し出された。そのディスプレイには新刊書籍の表紙がずらりと並んでいる。「ハード、ソフト、クラウドをシームレスに統合するデバイスだ。電子メールでも電子書籍でもあらゆる機能を1つの窓で扱える」──。そう語ると、米グーグルのエリック・シュミット会長は薄型タブレットをポケットから取り出してみせた。

 9月25日に東京都内で開催されたタブレット端末「Nexus 7」の発表会。もう一つの目玉は電子書店「Google Play ブックス」の国内展開だった。書籍数は明らかにしていないものの、角川グループ、翔泳社、PHP研究所などが書籍コンテンツを提供。既に海外では400万冊をそろえる巨大サービスに成長している。

 検索や地図などのWebサービスのみならず、OSや端末を含む垂直統合のプラットフォームを構築し、IT業界で確固たる地位を築いてきた。そのグーグルが次はコンテンツ配信で影響力を高めようとしている。特に電子書籍に大きな期待を寄せていることは、端末と同時に国内配信を発表したことでも明らかだ。

米アマゾンも秒読み段階

 IT分野の巨大企業たちが電子書籍の事業拡大に向けて加速を続けている。出版業界も巻き込み、新たなサービスや端末が次々と登場し、ユーザーを取り込んでいる。

 先頭を走るのは米アマゾン。9月には高解像度の「Kindle Fire HD」や、ライトを搭載して暗い場所でも読める電子ペーパー端末「Kindle Paperwhite」を米国で発表した。6月には日本でKindleを近日発売すると公表しており、サービス開始はいまや秒読み段階とみられている。

 ネット通販でアマゾンとライバル関係にある楽天は1月にカナダの電子書籍会社コボを買収。7月には日本でサービスを開始した。

 国内企業ではソニーが電子書籍の世界展開をしている。「今後のエンターテインメントとしてのデジタルコンテンツには、音楽・映像・ゲームに加えて電子書籍がなくてはならない存在となる」(ソニーの電子書籍事業を牽引するVAIO&Mobile事業本部の野口不二夫デジタルリーディング事業部長)と断言する。小説やコミックを原作とした映画やゲームは多い。こうしたコンテンツ間の関連性をユーザーに提示できれば、より利便性は高まる。同社では第4のコンテンツである“書籍”を端末の種類にかかわらず楽しめる環境を構築していく。例えば、10月中旬には携帯ゲーム機「PlayStation Vita」にコミックの配信を開始する。ゲーム用の描画機能を駆使して、ページめくりなどの操作を高速化し、快適に読めるようにした。

 電子書籍の歴史は長い(下表)。1990年以降にCD-ROMやFDDを使った製品が登場し、2004年以降には電子ペーパーの端末が出現。2010年にはiPadの登場などにより電子書籍元年と言われた。ただ、業界内の期待をよそに、広く普及するまでには至らなかった。いよいよ2012年は、楽天/コボや米グーグルが参入、そして米アマゾンの上陸も迫る。これら巨大書店の登場が、停滞ムードの殻を吹き飛ばすこととなりそうだ。

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※ 2012年10月24日、Amazon.co.jpはタブレット「Kindle Fire」と電子書籍端末の「Kindle Paperwhite」を日本国内で発売すると発表しました。詳細は下記記事をご覧ください。
アマゾンが日本国内でタブレット/電子書籍端末「Kindle」を発売
わずか1クリックで購入できる「Kindleストア」

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