芸能人ブログにも飛び火したクチコミマーケティングの“やらせ”

 年明けのインターネット上の話題は、飲食店クチコミ情報サイト「食べログ」(図1)で発覚したやらせ問題で持ち切りだった。「好意的なクチコミを書いてお店の評価を上げます」と売り込む不正業者と、その誘いに安易に乗ってしまう飲食店の構図が明らかになった。

図1 運営会社(カカクコム)の調査で39の悪質なやらせ投稿業者が発覚した飲食店紹介サイト「食べログ」。会員登録すれば、誰でもコメントや評価点を付けられる(画面の投稿はやらせではありません)
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 この騒動で浮上したキーワードが「ステマ(ステルスマーケティング)」。レーダーに探知されにくいステルス戦闘機のごとく、消費者に広告と悟られないように宣伝する手法で、要するにやらせ、サクラだ。

 ただ、ひと口にステマといってもその悪質度にはレベル差がある(図2)。食べログ事件ではやらせを持ちかける業者も依頼する飲食店も、消費者を欺く行為であることを認識しているので悪質度は高い。

図2 悪質な業者が一般人のふりをしてやらせ投稿した食べログ事件は完全なステマ。試供品などの提供を受けてブログに記事を書くクチコミマーケティングでは、業者との関係性の記載がポイントだ
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 一方で、消費者をだます意図はないのにステマ疑惑を持たれてしまうケースもある。昨年9月、花王が歯磨き粉「クリアクリーン」のプロモーションで実施した芸能人ブログの利用がこれに該当する。サイバーエージェントのブログサービス「アメブロ」では、タレントやスポーツ選手など約1万人の著名人がブログを開設しており、企業が彼らに商品を提供して気に入れば紹介記事を書いてもらえる「記事マッチ」という有償サービスがある。花王はこのサービスを利用したが、タレント2人が書いた同商品の記事は文面がほとんど同一で、商品の提供を受けている記述もなかったため、ステマ呼ばわりされた。

 有名人に限らずブロガーを招いて試食会や新商品体験イベントなどを開くクチコミマーケティングでは、商品の提供や試食会への参加といった企業とブロガーの関係性を明記してもらい、書く内容に企業側が一切干渉しないことがクチコミの信頼性を保つ上で重要になる。花王のケースでは、花王側は関係性の明記を求めたが、サイバーエージェントがこれを芸能人に強制していなかったため、やらせ臭いブログが公開されて花王が批判された。この事件を受け、サイバーエージェントは関係性の明記に同意する著名人にのみ記事マッチを依頼するよう方針を変更した。

 なお、現行法でステマ行為を罰する法律はない。「国産とうたいながら実は中国産」といった虚偽があれば景品表示法の優良誤認に該当するが、店の雰囲気の感想などは個人差が大きく摘発は困難だ。

 それでも食べログ事件を経てネット利用者のクチコミ情報を見る目は厳しくなり、悪評はソーシャルメディアを介して拡散する。ステマ行為はハイリスク・ローリターン、ばれれば致命的なマイナスリターンと心得たほうがよさそうだ。

出典:日経PC21 2012年4月号
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