市販のDVD映像ソフトをパソコンでコピーして楽しんでいる人は少なくないだろう。しかし、これまで合法だった市販のDVD映像ソフトに掛けられている CSSなどのコピー防止機能を解除して複製する行為は、2012年1月以降は違法となる可能性が高い。「アクセスコントロール回避規制」と呼ばれる制度の見直しが検討されており、著作権法や不正競争防止法(不競法)といった法律の改正案が、順調にいけば2011年の通常国会で成立する見込みだ。

保護対策を拡大

 アクセスコントロール回避規制は、不正コピーや不正アクセスの防止機能を破って映像やゲームソフトのプログラムなどを複製するのを規制する法制度。主に著作権法と不競法で規定されている。従来は規制が過剰にならないよう、規制対象を限定して運用されていたが、ニンテンドーDSのソフトを不正コピーして遊べるようにする“マジコン”(マジックコンピューター)が広がったことを契機に、規制強化されることになった(図1)。

 従来の著作権法の保護対象は、不正コピーを防ぐ“技術”(コピーコントロール技術)のみ。例えば音楽CDの「SCMS」、地上デジタル放送の「ダビング 10」などがこれに当たる。一方、DVDのCSSなどの暗号は、データ解読を困難にすることでDVD映像の無断視聴などをさせないという解釈で、不正アクセスを防ぐ技術(アクセスコントロール技術)に分類されていた。著作権法ではコピーコントロールの回避による無断複製を禁じているが、アクセスコントロールの回避による無断視聴は著作物の複製と直接は関係ないとして、今までは規制していなかった。

 今回の改正では、技術に加え“機能”にも着目し、実質的に不正コピーを防ぐ目的で実装された機能であれば、同法の保護対象に含める。CSS解除機能を持つ機器やソフトの輸入・販売やサービスの提供などが禁止される。個人がこうした機器やソフトを使いCSSを解除する行為も、営利目的でなければ罰則は適用されない見込みだが、違法となる。

 不競法でも規制対象を拡大する。同法は著作権法と異なり、以前から不正アクセス/不正コピーの両方とも対象だったが、それらを解除する機能“のみ”を備えた機器やソフトなどに限定していた。このため、例えばマジコンに音楽再生機能を付けて規制を免れようとするといった事例が見られた。今回の改正では規制対象を広げ、抜け穴をふさぐ。

懲役・罰金刑を追加

 また、現行の不競法では刑事罰の規定がなく、規制対象であっても差止請求や損害賠償請求といった民事訴訟で対抗するしかなく、実効性に限界があった。そこで今回の改正では懲役刑と罰金刑から成る刑事罰を新設し、輸入・販売などの行為を強制力のある形で取り締まる。

 一連の改正には、関税法も含まれる。同法では偽ブランド品や象牙などを「輸出入禁止品」とし、これらを輸出入しようとするのを税関で差し止める、いわゆる水際措置を規定している。しかし不正コピー/不正アクセス関連の機器などは、これまで輸出入禁止品の対象外だった。今回の改正により輸出入禁止品に追加し、税関でマジコンなどを発見した場合に直ちに押収可能にする。

 これらの法改正に対しては懸念もある。法改正を検討した文化審議会や産業構造審議会では、「自作ゲームのプレイや、メーカーによるソフト開発など正当な行為にも影響が及びかねない」との意見も出た。しかし、マジコンのまん延によるゲーム業界の被害は深刻で、対策が急務との観点から、最終的には法改正の方向でまとまった。

●改正案の主な内容
図1 2011年の通常国会で改正が見込まれる、不正コピーや不正アクセス関連の主な法律をまとめた。著作権法では保護対象を拡大し、DVDのCSSなどの暗号機能やゲームソフトのコピー防止機能も適用範囲とする。不正競争防止法と関税法では、刑事罰や税関での水際措置の導入で取り締まりを強化する
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出典:日経パソコン 2011年2月28日号
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。