iPhone普及が急成長呼ぶ

 オーグメンテッド・リアリティー[注]、日本語でいう「拡張現実」と呼ばれる技術が、いよいよ実用化段階を迎えている。以前から開発が進められていた技術だが、iPhoneをはじめとするスマートフォンの普及により、人気に火が付いた格好だ。

 拡張現実とは、目の前の実在するものと、電子化された情報を一緒に表示する技術のこと(図1)。例えば、「ウィキチュード」というソフトは、観光地で名物にカメラを向けると、それにまつわる情報などを自動的に取得して、画面の映像と一緒に表示してくれる。調べたいものの名前がわからなくても、検索できてしまうのだ。拡張現実を使うと、何がどう便利になるのか、代表的なソフトで見てみよう(図2)。

図1 拡張現実の技術は、位置情報を扱える、電子コンパス内蔵スマートフォンなどで利用可能。「ウィキチュード」の場合、画面に映し出した現実の風景に、関連した情報を重ね合わせる。単なる風景が、追加情報で拡張されるわけだ
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図2 拡張現実を使ったソフトの例。町中で周囲を撮影すると、近隣の駅やコンビニの場所を案内してくれる(左図)。書籍の表紙やバーコードを撮影すると、詳細な情報を呼び出せる(右図)

 「レイヤー・リアリティー・ブラウザー」(以下、レイヤー)は、格段に地図ソフトが便利になる例だ。例えば、町中で道に迷ったときに、最寄りの駅を探したい。そういうとき、スマートフォンのカメラを周囲に向ければ、何という駅がどの方向の何メートル先にあるという情報を、画面に表示した街並みの中に示してくれる。レイヤーでは、駅だけでなく、近隣のコンビニや観光地から、救命装置「AED」の設置場所まで、さまざまなものの場所を案内してくれる。

 「グーグルゴグル」も、拡張現実により、便利になったソフトの例だ。こちらは、美術館で名作絵画を撮影すると、その詳しい情報をスマートフォンに表示してくれる。本の表紙やワインのラベルなども同様で、知りたいものの画像を撮るだけで、インターネット上の情報を即座に集めてくれる。

 拡張現実がもたらす技術的な可能性は、とても大きい。必要な情報を自動的に引き出すというだけでなく、広告やアート作品を現実に重ねて表示するといった方向に発展していくことが予想されている。旅行ガイドで知られるロンリー・プラネット社は、すでに拡張現実版のガイドブック開発に着手している。拡張技術はこれからますます活気づくことが予想される、期待の分野なのだ。

 

[注]Augmented Reality。「AR」と略されることも多い

■変更履歴
「Augmented Reality」の日本語表記が誤っていました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。[2010/3/24 14:40]
出典:日経PC21 2010年3月号
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。