2008年5月7日 東京都内のホテルにて(撮影:皆木 優子)

 2008年6月27日、ビル・ゲイツ氏が経営の第一線から退きました。その約2カ月前の5月7日に開かれた国内最後の会見において、ゲイツ氏は記者団からの質問に終始、笑顔で対応。「今後、マイクロソフトで働くのはフルタイムではなく、パートタイムになります」と語ったのが印象的でした。

 筆者の知る限り、記者会見においてゲイツ氏がこんなに穏やかな表情を見せたのは初めてのことです。記者からの厳しい質問に対して、嫌な顔を見せることなく、にこやかに受け答え。同氏が発する言葉の一つひとつから、大きな荷を肩から降ろした「安堵感」や、ある種の「達成感」が伝わってくるかのようでした。

 米マイクロソフトが、ゲイツ氏の去就について発表したのは2年前の2006年6月。夫人ともに慈善団体「Bill & Melinda Gates Foundation」の活動に力を注ぐとの報道を聞き、「一つの時代が終わるのか」と感じた人は少なくないでしょう。私もその一人です。パソコンが一般的ではなかった時代から、コンピューターの発展とともに歩んできた人間にとって、ゲイツ氏の存在はとても大きなものでした。

 筆者が、コンピューターのエンジニアとして働き出したのは1987年。記者活動を始めたのが1989年です。ときは、まさしく“ビル・ゲイツの時代”。ハードウエアとソフトウエアの急激な進化を目の当たりにし、誰もがまだ見ぬ未来に胸を躍らせ、夢を語り合っていました。

 そして、その象徴的な存在だったのがゲイツ氏。パソコンがまだ“おもちゃ”だと思われていた時代に、パーソナルコンピューティングの可能性を示し、来るべき情報化社会の夢を語ったゲイツ氏の一挙手一投足に注目が集まったのです。

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