2013年6月2日、Intelの新型CPU「Haswell」(ハズウェル、開発コード名)が発売された。Haswellは従来のIvy Bridge(開発コード名)と同じ22nm製造プロセスを採用しながら、CPUの基本設計(マイクロアーキテクチャー)を更新した。日経WinPCはデスクトップPC向けの最上位モデルであるCore i7-4770Kを入手。従来モデルと性能や消費電力を比較した。

 デスクトップPC向けHaswellの主なラインアップは表の通り。今回はCore i7/i5シリーズが先行して登場しており、下位のCore i3シリーズの登場は2013年後半になる見込みだ。Core i7-4770Kは従来のIvy Bridgeで同じ位置付けのCore i7-3770Kに対して、CPUコア数、共有キャッシュの容量、動作周波数は変わらない。ただし、命令を実行するユニットの数やCPU内部のバッファーなどを増強し、Ivy Bridgeより約1割性能が上がるという。

 内蔵グラフィックスはCore i7-3770Kの「HD Graphics 4000」から、「HD Graphics 4600」に強化した。グラフィックス処理の実行ユニットは16個から20個に増え、最大動作周波数は1150MHzから1250MHzに上昇している。一方、実使用上の消費電力(TDP)は最大77Wから最大84Wに増えた。この他、アイドル時の省電力機能も強化。CPUコア、LLC(3次キャッシュ相当)、グラフィックスコアを独立した周波数で制御することで、低消費電力化に加えTurbo Boost時の効果も高めている。

Core i7-4770Kと同3770Kの性能や消費電力を比較

 HaswellのデスクトップPC向けCPUは、新しい「LGA1150」というパッケージになった。従来のIvy Bridgeで使われていたLGA1155とは互換性が無い。対応するチップセットは新しい「Intel 8」シリーズを使う。8シリーズは従来の7シリーズと比べて、USB 3.0端子が最大4個から6個、Serial ATA 6Gbps端子が最大2個から6個に増えている。一般消費者向けで最上位のチップセットは「Intel Z87」だ。今回はIntel Z87を搭載するIntel製のマザーボード「DZ87KLT-75K」と、同じくIntel Z87搭載のASUSTeK Computer製マザーボード「Z87 DELUXE」を使い、Core i7-4770Kの性能や消費電力を調べた。

 まず、3D画像レンダリングのベンチマークソフト「CINEBENCH R11.5」(MAXON Computer)でテストした。1スレッドで実行する「CPU(シングルコア)」では、Core i7-4770Kは同3770Kに対して5%スコアが伸びた。動作周波数は変わらないため、マイクロアーキテクチャーの変更が影響していると考えられる。マルチスレッドで実行する「CPU」では8%の伸びと、さらに性能が上昇した。ただ、どちらも性能向上は1割に届かない。

 一方、内蔵グラフィックス機能の性能向上は著しい。DirectX 11に対応した「3DMark」(Futuremark)で、グラフィックス性能を見る「Graphics score」を比べた。Core i7-4770Kは同3770Kに対して1.4倍以上の伸びだった。比較用に6000~8000円程度のグラフィックスボード「GeForce GT 630」も調べたところ、Core i7-4770Kが4%上回った。

 負荷の高い3Dゲームをプレーしているときの平均フレームレートも調べた。人気のFPSゲーム「バトルフィールド 3」(エレクトロニック・アーツ)をグラフィックス品質を「最高」にして、1280×1024ドットの解像度でプレーした。3DMarkほどではないが、Core i7-4770Kは同3770Kを1.3倍上回った。ただ、GeForce GT 630に対しては逆に2割以上劣っていた。Core i7-4770Kの方が潜在的なグラフィックス性能は高くても、グラフィックスドライバーがGeForce GT 630ほどゲームに最適化されていないためだと考えられる。

製品全体では着実な進化を遂げるも問題は価格

 システム全体の消費電力も調べた。「アイドル時」はWindowsのアイドル状態、「負荷時」はCINEBENCH R11.5の「CPU」を実行して全コアに高い負荷をかけた状態だ。マザーボードはDZ87KLT-75KとZ87 DELUXEの両方を使った。Core i7-3770KはLGA1155対応のマザーボード「P8Z77-V」(ASUSTeK Computer)を使っているため、厳密にはCPU自体の消費電力の比較にはならない。あくまでも参考としてほしい。

 アイドル時はどちらのマザーボードを使っても、Core i7-4770Kが同3770Kを下回った。情報表示ソフトの「CPU-Z」でアイドル時の情報を比べると、Core i7-4770KのCPUコア倍率は8倍と、同3770Kの16倍より下がっていた。マザーボードは異なるが、このことが消費電力に影響していると考えられる。負荷時でも、DZ87KLT-75Kを使った場合はCore i7-4770Kが同3770Kより2W低かった。Z87 DELUXEを使った場合は、逆にCore i7-4770Kが同3770Kより9W高くなった。

 Core i7-4770Kは同3770Kに対して演算性能とグラフィックス性能のいずれも向上している。ただ、演算性能の伸びは微増で、より強化されているのはグラフィックス性能だ。アイドル時の消費電力は低い傾向が出ており、負荷時もマザーボードによってはCore i7-3770Kを下回った。製品全体で見れば着実な進化を遂げている。ただし、実勢価格は3万8800円と、Core i7-3770Kの発売当初の約3万円と比べて高価だ。

 今回は試していないが、オーバークロックの方法も変わっている。Ivy BridgeではCPU用の基準動作周波数を±7%程度までしか変更できなかった。一方、HaswellではPCI Express用の基準動作周波数を100MHzに抑えたまま、CPU用の基準動作周波数を125MHzや167MHzに段階的に切り替えられる。これは、最大12スレッドを同時実行できる「LGA2011」パッケージのCore i7-3970X Extreme Editionなどと似ている。オーバークロックを楽しみたいユーザーにとっては、Haswellは挑戦しがいのあるCPUといえそうだ。

 Haswellの他のモデルも含めた詳細なテストと技術解説は、6月29日発売の日経WinPC 8月号に掲載予定だ。


テスト環境
CPU:Core i7-4770K(3.5GHz)、Core i7-3770K(3.5GHz)、マザーボード:LGA1150はDZ87KLT-75K(Intel、Intel Z87搭載、演算性能と消費電力のテストで使用)とZ87 DELUXE(ASUSTeK Computer、Intel Z87搭載、グラフィックス性能と消費電力のテストで使用)、LGA1155はP8Z77-V(ASUSTeK Computer、Intel Z77搭載)、メモリー:DDR3-1600 4GB×2、起動ドライブ:Crucial m4(マイクロン ジャパン、256GB)、グラフィックスボード:CPUは内蔵グラフィックス機能を使用(ドライバーはバージョン15.31)、GeForce GT 630は「GT630-2GD3」(ASUSTeK Computer、ドライバーは320.18)、電源ユニット:Silent Pro Gold 800W(Cooler Master、定格出力800W、80 PLUS GOLD取得)、OS:Windows 7 Ultimate Service Pack 1 64ビット日本語版。

■変更履歴
記事公開当初、システム全体の消費電力のグラフで、負荷時は3DMark 11の「Graphics Test 1」実行時の平均値としていましたが、正しくはCINEBENCH R11.5の「CPU」実行時の平均値です。グラフと本文は修正済みです。 [2013/06/10 15:25]