シャープは2012年12月、同社が2012年3月から量産を開始したIGZO液晶に関する技術説明会を開催した。液晶を駆動するトランジスタを小型化できるためバックライト光の透過量を高めやすくなるといった省電力化を実現するための特徴を持ち、スマートフォンやタブレットの長時間駆動を実現する。今後はより高解像度化を目指すなどさらなる改良を目指す。

 IGZOとはインジウム(Indium)、ガリウム(Gallium)、亜鉛(Zinc)、酸素(Oxygen)によって構成する酸化物半導体のことを指す。このIGZOを画素の表示のオン・オフを切り替える薄膜トランジスタ(TFT)の内部に使用することで、省電力化を実現する。IGZO液晶を搭載したNTTドコモの「AQUOS PHONE ZETA SH-02E」は「2日間充電しなくても使える」(ディスプレイデバイス開発本部 技術開発センター 技術企画室 今井明室長)ことをうたっている。

 省電力を実現できる理由の一つは、薄膜トランジスタの小型化ができること。従来のアモルファスシリコンと比べると、IGZOを使った薄膜トランジスタは電流の流れやすさが20~50倍になる。この特性があるため、薄膜トランジスタをより小型化しても十分な性能を発揮できる。薄膜トランジスタは液晶内部の1画素ごとに1つずつ配置されているので、小型化できるとバックライトの光の透過率が向上する。

 これに加えて、IGZO液晶は静止画を表示している際など画面の更新がないときに書き換えの動作を止める「液晶アイドリングストップ」機能を持っている。「最近の車は停まっているときにエンジンを止める。それと似たコンセプト」(今井明室長)と説明する。通常の液晶ディスプレイは1秒に60回(60Hz)の頻度で画面を書き換えている。IGZO液晶では状況に応じて1秒に1回(1Hz)まで下げられる。

 液晶アイドリングストップは、IGZO方式の薄膜トランジスタを使うと電荷が漏れにくいという特性を利用することで実現した。薄膜トランジスタは、液晶の画素それぞれに電荷を出し入れするための弁の役割を持っている。従来のアモルファスシリコンでは、弁の栓を閉めたときに電荷の漏れが大きく「水道の蛇口を閉めても水が漏れ出しているような状態」(ディスプレイデバイス第2生産本部第2プロセス開発室の松尾拓哉室長)となっていたという。IGZOを使った薄膜トランジスタは、電荷が漏れにくいため、書き換え動作を止めても画像表示を維持できる。「IGZOの実験中、担当者が画面の電源切っても絵が消えないことを思いがけず発見した」(松尾室長)のだという。

 この特性はタッチパネル操作の感度向上にも役立てている。液晶が駆動を止める一瞬のうちにタッチパネルの操作の検出をすることで、液晶パネル部からのノイズを除去する。こうすることで画面と触れる面積の小さいペンなどでも操作しやすくした。

 今後はフルHDの解像度を持つスマートフォンなどに向けてIGZO液晶の高精細さを高めていくという。