「2012 PCカンファレンス」の2日目である2012年8月5日に開催された分科会の「小中高教育」では、情報モラルやプレゼンテーション能力など、社会に出る上で必要な能力の習得に関する発表が行われた。情報モラルでは保護者を巻き込んだ教育の実践について報告。プレゼン能力では生徒に実際にプレゼンさせて、ツールの使い方にとどまらないスキルの定着に取り組んだ事例を発表した。

 情報モラル教育について発表したのは、早稲田大学高等学院の八百幸大氏。八百幸氏は、高校1年と同校傘下の中学全学年の生徒に、セキュリティやマナー、著作権やプライバシーなど情報モラルに関するテストを行った。それと並行して中学生保護者にも同様の内容を、保護者会でアンケートの形で実施。その回答を比較すると、中学は学年が上がるほど情報モラルに対する理解は深まっており、中学3年は保護者とほぼ同等だったという。

 また保護者のアンケートでは、携帯電話の家庭内での使用ルールに関する設問も用意。「携帯電話はリビングに置き、自室に持ち込まない」「食事中は携帯電話を触らない」「親は子どもの携帯の中身を見ることができる」などの回答があり、「使用時間や料金以外にどういうルールを設けているかが見えてきた」(八百幸氏)という。

 八百幸氏はこうしたアンケートの結果を資料にまとめて、保護者会で配布した。保護者にフィードバックすることで、学校内に限らず家庭も巻き込んだ情報モラル教育を推進するのが目的だ。「今後は他校とも協力しながら調査や情報提供の輪を広げていきたい」(八百幸氏)。

 札幌学院大学の皆川雅章氏は、高校生や大学生のプレゼンテーション能力を評価する手法について、研究結果を披露した。大学の学部生や大学院生に「PowerPoint」を使って研究内容をプレゼンしてもらい、それを評価して優れたプレゼンを表彰するものだが、評価の重きは研究内容を効果的に伝えることに置かれているのがポイントだ。「研究成果で競うのでは学部生は院生に太刀打ちできない。しかし効果的に伝えることが評価ポイントであれば、学部生も十分受賞のチャンスがあり、励みになる」(皆川氏)。発表の構成や論旨の適切さ、スライドやスピーチの分かりやすさなどの各項目について、5段階の点数で評価する。

 高校生には「交通事故の原因分析」などのテーマを与えて発表させるが、「発表自体の優劣を競うことをせず、ふだんと異なる環境を経験させる」(皆川氏)のが狙いだ。終了後の講評を通じて、生徒のプレゼン能力向上を図る。「発表中の体の向きなど基本的なことを教えるだけでも、プレゼン能力は大きく変わる」(皆川氏)という。

植物栽培+センサー情報で、問題解決能力高める

このほか、札幌市立東園小学校の佐藤正範氏は、大学教員とデザイナー、小学校教員の連携で、ものづくりやプログラミングを小学生に体験してもらうイベントを開催したことについて、企画に必要な要素や成果、課題を発表した。東京大学大学院農学生命科学研究科農学国際専攻の横川華枝氏は、センサー情報を活用した稲の栽培を小学校で実践した研究について報告した。「総合の授業枠での植物栽培は、情操教育や食育に内容が偏りがち。栽培中にセンサーで取得したデータの変化を分析させ、原因や対策などを考えさせることで、総合の授業の大きな目的である問題解決能力育成につながると考えた」(横川氏)。

 大阪成蹊短期大学経営会計学科の長澤直子氏は、学生が非効率なローマ字入力を行っていることについて、その原因などについて研究した結果を発表した。長澤氏によると、学生は「てぃ」や「うぇ」などを「THI」や「WE」で入力せず、「TEXI」や「UXE」などわざわざ入力数の多い方法で入力しており、その原因は小中学校の教科書にあるローマ字表には、「い」や「え」を拗音とする文字が無いためと指摘。大学で効率的な入力方法を指導することはできるが、学生は最初に覚えた非効率なローマ字入力を積極的に変えようとはしないという。長澤氏は「自己流の入力方法はなかなか直らない。初等教育から正しいタッチタイピングを学ばせるべき」と提言した。