これからの教育を考える『世界に通用する人材育成のための「21世紀型スキル」フォーラム』が、2012年5月21日に東京・千代田区で開催された。創造力、コミュニケーション力、協調性、ICTを使いこなす力など、今後世界を舞台に活躍するために必要な能力をいかに育むかをテーマに、有識者によるプレゼンテーションなどが行われた。

 フォーラムを主催したのは、「21世紀型スキル」フォーラム有志市長の会。このテーマに関心を持つ市長の集まりで、佐賀県多久市の横尾俊彦市長が世話人を務める。フォーラムでは横尾市長の挨拶のほか、教育コンサルタントとして活躍する米エデュケーションインパクトのブルース・ディクソン氏や、東京大学大学院情報学環の山内祐平准教授らが講演。米マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOや、マイクロソフト日本法人の樋口泰行社長も登壇した。

 21世紀型スキルとは、世界の教育科学者や国際教育機関によって考案された、21世紀の国際社会で必要な能力。批判的思考力、問題解決能力、コミュニケーション能力、コラボレーション能力、ICT活用能力など、これからの子どもたちが身に付けるべき能力を規定している。これからの教育について考えていたときにこのスキルの存在を知ったという横尾氏は、「こっそり多久市だけで取り組んで先行しようとも思った。が、新しい時代の新しいスキルは、多くの人と一緒に議論すべきだと考えた」(横尾氏)。そこで、他市の市長などにも声をかけ、今回のフォーラムが実現したという。

 「21世紀型スキルが世界を変える」という題目で講演に立ったディクソン氏は、教育でのICT活用に長年取り組んできた専門家。ディクソン氏は、ICTの進歩などによって学びの環境が大きく変化していると指摘した。これまでは学校に通い、そこにいる教師に教えを受けるスタイルだったが、現在は学校の外へと学習の場が広がりつつある。例えば遠隔地の大学教授の講義も動画で視聴できるし、ソーシャルネットワークなどによって教師以外のさまざまな人からフィードバックを受けられる。

 このように、ICTの活用にはさまざまな可能性がある。授業で断片的に知識を与えられる代わりに、十分な情報に基づいて学習者が自分で学習内容や方法を選べるようになる。世界中の人々と交流し、蓄積された知恵に触れることができる。こうした体験を通して、フォーラムのテーマである21世紀型スキルを身に付けられるというわけだ。世界各地では既にこのテーマでさまざまな取り組みがなされており、成果を上げているという。

 日本も今こそ行動を起こすべきときだ、とディクソン氏は言う。そうすれば、「技術を自在に使いこなし、業界を超えて活躍できる人になれる。国家や国境を越えて他人と協働できる」(ディクソン氏)。そのために、1人1台のパソコン整備や、ICTを有効に活用するための教授法の確立などに対して投資すべきだと提言した。

 東京大学の山内氏は、米国の有識者による「小学生の65%は、現在存在しない職業に就く」との予測を紹介(山内氏による関連記事)。20世紀型の教育は、既に存在する職業に就くために幼い頃からスキルを積み上げていくというものだった。だがICTの発達によって変化のスピードが速まったため、それが通用しなくなる。では、今はない職業のために、子どもたちにどんなスキルを身に付けさせればよいのか。

 答えは、「どんな職業に就いても転移可能な、高度かつ一般的能力」(山内氏)。それが、21世紀型スキルにほかならないという。

 ただし日本の教育は、まだそのための対応ができていないと指摘する。国際的な調査などから、日本の子どもたちは基礎学力は高いものの、応用力に課題があるとされる。特に、日本の学習指導要領で扱いにくいのが「創造性と世界で暮らす能力」だという。

 こうした新しい教育目標に対応しようとしても、現在の学校には時間もお金もなく、人もいない。だから「学校だけではないシステムが必要」だと山内氏は指摘する。そこで活用すべきがICTだ。「ICTを窓にして、NPOや企業、大学などと教室をつなぐ」(山内氏)。これによって学校以外の人からさまざまな支援が受けられるという。