ガラス張りの広いキッチンスタジオ内で、気軽に料理を習得できるとして利用者を集めているABC Cooking Studioは2011年7月29日、iPad上で手書き入力できる入会登録システムを8月1日から導入すると発表した。同時に従来から利用していた250台に加え、250台のiPadを導入。計500台を利用する。従来は、専用紙に記入していたが、MetaMoJiの手書き入力エンジン「mazec」を組み込んだ専用のアプリを作り、入会手続きを効率化。キーボード入力に慣れていない人でも違和感が少なく入力できるようにした。手続きの際の待ち時間を短縮できるというメリットもある。

 同社では2010年10月に全国115カ所の店舗でそれぞれ2~3台のiPadを導入していた。用途は、コース申し込み手続きの簡略化。利用者は、会員申し込みの後で、料理、パン作り、ケーキ作りなど、さまざまなコースを選択する。iPadを導入する以前は、専用の申し込み用紙に履修するコースを記入していた。その用紙は、申し込みの記録として残すため、本社で回収して保存していた。

 毎月本社に集まるコースの申し込み用紙は約2万枚。年間では約25万枚にも達する。各店舗から用紙を集め、管理するには膨大な手間が掛かる。この作業を簡略化し、低コスト化を進めるべく、iPadでペーパーレス化を実現した。具体的には、iPadのタッチパネル上でコースを選び、手書きでサインを記入すると、都内のデータセンターに置かれたサーバーに即座に集約できるという仕組みにした。「料理の講師が用紙を集め、本社に送付する手間がなくなり、業務の負荷を低減できた。同時に書類を郵送するにコストも削減できた」(中林紀泰WEB/システム本部長)という効果が得られた。

入会時の申し込みもiPadで

 iPadの利用で一定の成果を得た同社は、さらなる効率化を進めるべく、もう一歩を踏み出した。利用者が入会時に記入する申し込み用紙を廃止し、iPad上で全ての顧客情報を入力してもらうというものだ。氏名、住所、電話番号、勤務先の情報、クレジットカード関連など、入会時に必要となる項目は多い。ソフトウエアキーボードで入力することも可能だが、「利用者の中には、キーボード入力に慣れていない人もいる。多くの情報を違和感なく入力してもらうには手書きしかない」(中林本部長)という結論に行き着いた。

 当初は、自前で手書き入力アプリケーションの開発を進めた。外部の開発した手書き認識エンジンと、Webブラウザーの機能を組み合わせた。ただ、そのエンジンでは手書き文字を1字ずつ認識させることしかできず、認識率も低かった。アプリケーションの開発で試行錯誤を繰り返していたとき、MetaMoJiが手書き入力エンジン「mazec」を発表。その機能は、まさに入会手続きの入力システムに求めていたものだった。MetaMoJiと連絡を取り、連続した文字を変換できること、十分な認識精度を持っていることを確認。細部の機能などを検証した上で、採用を決めた。

 6月にはmazecを使ったWebブラウザー「mazec web client」をカスタマイズした試作版のアプリケーションが完成した。本格導入の前にして、複数店舗の講師に操作を試してもらったところ、スムーズに入力できるとおおむね好評だった。一部「書いた文字を消す方法が分からない」といった操作に戸惑う声もあったが、操作のコツを紹介する1ページ分のマニュアルを作成して対処した。

30分~1時間かかっていた手続きが数秒で完了

 入会手続きのiPad導入により、入会手続きの待ち時間を短縮できるという効果が得られた。従来は紙の申込用紙に記入をしてもらったあとは、講師がFAXで同社の入力センターに送っていた。その後、入力センターのオペレーターが各種の情報をデータベースに入力し、金融機関の審査を待つ時間が必要だった。そのため、入会の処理が完了するまでに30~40分、混雑時には1時間ほどかかっていた。

 iPad上の入力システムを導入することで、「入会処理は数分で完了する。9月には、クレジットカード関連のシステムとの連携を強化するため、処理時間は数秒で終わるようになる」(情報システムグループの田上英治氏)。入力漏れなどがあった場合に警告を出す機能も実装したので、入力のミスを減らすこともできそうだ。

 今後はiPad2が内蔵するカメラで「作った料理を撮影して、その場でABC Cooking Studioのブログにアップできる」(中林本部長)など、利用者が楽しめる活用法を模索していく。