東京で開かれた教育関連のイベント「New Education Expo 2011」で2011年6月4日、教育の情報化に関するセミナーが開催された。題して「1人1台PCを活用した協働教育の取り組み~フューチャースクール実証校の事例から~」。教育分野の情報化に関するキーパーソンと、フューチャースクール実証実験に参加する東日本の小学校全5校の代表者らが一堂に会し、それぞれの立場から、フューチャースクール推進事業の成果と課題を発表した。

 フューチャースクール推進事業とは2010年にスタートした、総務省と文部科学省とが連携して行うプロジェクト。東日本と西日本から公立小学校5校ずつを選び(全国で10校)、電子黒板や1人1台のタブレットPC、校内LANなどのICT(情報通信技術)環境を構築した上で授業を行い、技術的課題を抽出・分析する。実証研究の結果とポイントは、「教育分野におけるICT利活用推進のための情報通信技術面に関するガイドライン(手引書)2011」として、2011年4月8日に公表された(関連記事)。準備期間などを経て、実際にICT環境で各校が授業を始めたのは2010年10月前後。約半年でガイドラインを取りまとめたことになる。ICTを使った授業に関する実証研究は、今後2年間継続する予定だ。

 セミナー冒頭、教育の情報化に関する第一人者で、フューチャースクール推進事業の研究会で座長を務める東京工業大学の清水康敬監事・名誉教授が登壇し、フューチャースクールプロジェクト全体について「大きな成果が出てきている。今後の教育のあり方を考える上で非常に重要な位置付け」と評価した。

 わずかな期間で、教師のICT活用の指導力が向上するなどの成果が出ていると指摘。児童1人に対し1台のタブレットPCを導入することは今後も重要な施策だとしたうえで、「『1人1台』に多く注目が集まっている。自習や個別学習というイメージに捉えられているが、そうではない。電子黒板を使うなどして教師の指導が徹底しているところに、タブレットPCが入ったことで、一緒に学び合う“協働教育”になっている」(清水氏)と述べ、授業全般の質の底上げにつながっているという認識を示した。

 次に、同プロジェクトを担当する総務省情報流通行政局情報通信利用推進課の小林知也課長補佐が登壇し、「今の実証校が、ICT環境で行う教育の未来の形と定義しているわけではない。どのような形にしていくか、この事業を通して国民的な議論を深めたい」と語った。財源や、教科書検定など制度の問題などが議論すべき要素だという。

 続いて、東日本の実証校5校の代表者が、自校での実践例を挙げたうえで、ICT環境全般について得られた成果と課題を発表した。登壇した代表者は、山形県寒河江(さがえ)市立高松小学校教諭の石澤紀雄氏、東京都葛飾区立本田(ほんでん)小学校校長の筒井厚博氏、長野市立塩崎小学校教諭の近藤諭氏、石川県内灘町立大根布(おおねぶ)小学校で情報教育・FS推進を担当する川井勝弘氏、北海道石狩市立紅南小学校教諭の加藤悦雄氏(発表順)の5名。

 多くの小学校がタブレットPCならではの使い方を模索した。「タブレットPCは教室を移動しての利用が便利。体育館に持っていき、タブレットPCに付属するカメラで、マット運動をする場面を3分くらいの動画に撮った。その場で見られたので好評だった」(高松小学校)、「あらかじめ通信カードの扱いを練習して、ランドセルに入れて自宅へ持ち帰った。自宅で手伝いをしている様子を写真に撮り、それを見せ合った」(大根布小学校)、「タブレットPCを外に持ち出し、消防署へ社会見学に行った。ノートのようにペンで書き込んで利用した」(塩崎小学校)。

 ICT環境による授業の成果として、「自分の成果物が電子黒板に写って児童の学習意欲が向上する」「自分の考えや意見をタブレットPCや電子黒板というツールで他の児童と共有しやすい」などが挙がった。教員側では、「教材などの準備時間が減らせた」「教員同士の学び合いや交流を促す機会が増えた」などの発言があった。

 課題には、「教師のPCから児童のPCへの転送など、機器の扱いや操作でとまどう場面があった」「ICT活用が効果的な場面の検証が進んでいない」「一貫した利用指針が自校に存在しない」など、プロジェクトに対する準備や機器を使いこなすスキルに関するものが挙がった。

 なお、2011年6月15~16日に大阪で開催される「New Education Expo 2011 in 大阪」では、西日本において実施されたフューチャースクール推進事業の取り組みの発表がある(16日)。清水氏と総務省情報流通行政局情報通信利用促進課課長の安間敏雄氏、西日本地域でのフューチャースクール実証校5校の代表者が発表する予定だ。