AMDは2010年6月26日、4月に発表した6コアCPUの下位モデル、Phenom II X6 1055Tの低電力版を発売した。初期のモデルはTDP(熱設計電力、実使用上の最大消費電力)が125Wだったが、新モデルは95W。日経WinPC編集部は同製品を入手、既存製品と消費電力を比較した。

 TDP95WのOPN(Ordering Parts Numbers)は「HDT55TWFK6DGR」。45nmプロセスで製造したAM3パッケージのCPUで、動作周波数は2.8GHz。1次キャッシュはコア当たり128KB、2次キャッシュは同512KB、共有キャッシュを6MB備えるなど、性能面の仕様はTDP125Wと変わらない。仕様上の動作電圧はTDP125W版が1.125~1.40Vなのに対し、TDP95W版では1.075~1.375Vと若干下がっている。最大ケース温度はTDP125W版が62℃、TDP95W版が71℃だ。

Phenom II X6 1055TのTDP95W版。OPN(Ordering Parts Numbers)は「HDT55TWFK6DGR」。TDP125W版は「HDT55TFBK6DGR」だった。
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TDP95W版での情報表示ソフト「CPU-Z」の画面。アイドル時に800MHzまで動作周波数が下がっている。「Core Voltage」は1.140Vだった。
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TDP125W版におけるCPU-Zの画面。Core Voltageは1.212V。
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 テストに使用したパーツは以下の通りだ。

●テストに使用したパーツ
マザーボードM4A89GTD PRO/USB3(ASUSTeK Computer、AMD 890GX)
メモリーDDR3-1333 2GB×2
起動ドライブVertex Turbo 120GB(OCZ Technology、MLC SSD)
グラフィックスチップセット内蔵
電源ユニットXseries SS-750KM(Sea Sonic Electronics、定格出力750W、80 PLUS GOLD)
OSWindows 7 Ultimate 64ビット日本語版

 グラフィックスボードは搭載せず、チップセットの内蔵グラフィックス機能を使用した。光学式ドライブやケースファンもつなげていない。システム全体の消費電力は、アイドル時のほか3D画像レンダリングのベンチマークソフト「CINEBENCH R11.5」におけるマルチスレッド対応のテスト「CPU」を実行したときを負荷時として測定した。測定に使用したのは日置電機の「パワーハイテスタ3332」だ。

 比較のためTDP95W版のPhenom II X6 1055Tのほか、TDP125W版、Phenom II X4 965 Black Edition(3.4GHz、TDP125W版)とAthlon II X4 635(2.9GHz、TDP95W)も用意した。965 Black EditionはAMDの4コアCPUの最高峰、Athlon II X4 635は1万円以下で買えるリーズナブルな4コアCPUとして選んだ。

 テスト結果は下の通りだ。Phenom II X6 1055Tのシステム全体の消費電力がPhenom II X4 965 Black Editionより低いのは過去のテスト結果と同様の傾向だ。TDP95W版は、特に負荷時の消費電力が低い。TDP125W版が132Wだったのに対し、TDP95W版は113Wと約20Wも下がっている。これはAthlon II X4 635とほぼ同じ値だ。マルチスレッド対応アプリケーションの実行性能は、当然Phenom II X6 1055Tの方が高い。TDP95W版は、電力効率が優れたCPUだといえる。

システム全体の消費電力。グラフの左端はアイドル時、右端は「CINEBENCH R11.5」の「CPU」テストを実行したときの負荷時。TDP95W版のPhenom II X6 1055Tの消費電力は低く、負荷時でもAthlon II X4 635並みだった。
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 このほか、円周率計算ソフト「スーパーπ」を複数同時に実行する「Hyper PI 0.99b」でCPUに負荷を与え、マザーボードの付属ユーティリティー「PC Probe II」でCPU温度を調べた。実行開始から十分に時間がたった状態で、Phenom II X4 965 Black EditionとTDP125W版のPhenom II X6 1055Tが57℃を示していたのに対し、TDP95W版のPhenom II X6 1055TはAthlon II X4 635と同じ51℃だった。

 TDP95W版の実勢価格は2万3000円前後。TDP125W版は登場初期から値下がりし、1万9800円で買えるようになっている。性能は変わらないので、消費電力が低い分が付加価値として上乗せされているわけだ。マルチスレッド対応アプリケーションでの性能を確保しつつ、できるだけ消費電力を抑えたい、発熱に伴う騒音を減らしたいと考えているユーザーにはまさにうってつけのCPUといえるだろう。