AMDは2010年4月27日、Phenom II X6 1090T Black Edition(以下BE)と、同1055Tを発表した。AMDのデスクトップPC向けCPUでは初の6コアCPUとなる。動作周波数はPhenom II X6 1090T BEが3.2GHz、同1055Tが2.8GHz。新機能として動作周波数を自動的に高める「Turbo CORE」を搭載した。日経WinPC編集部では、Phenom II X6 1090T BEのサンプル品を入手。ベンチマークテストにより性能や消費電力を分析した。

Phenom II X6 1090T Black Edition。パッケージはAM3で、BIOSが対応していれば既存のマザーボードで利用可能。動作周波数は3.2GHz。Turbo CORE時は3.6GHzまで上昇する。
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 AMDはサーバー向けCPUのOpteronでは、2009年に既に6コアモデルを出荷していた。一方のIntelはサーバー向けだけでなく、2010年3月にデスクトップPC向けにも6コアのCore i7-980X Extreme Edition(以下EE)を発表済み。Core i7-980X EEは、物理的な1コアをソフトウエアからは2個あるように見せかける「Hyper-Threading」を搭載していることから、12スレッドを同時に実行可能だ。

 Hyper-ThreadingはCore i7-900シリーズや800シリーズも搭載しており、これらのCPUは4コアながら同時に8スレッドを実行できる。Hyper-Threadingによる8スレッドの同時実行はあくまでも仮想的なものだが、AMDのCPUは4コア止まり。仕様の上ではIntel製CPUに見劣りする面があった。

 Phenom II X6はこうした販売戦略上の弱点を打開するための策の1つとして登場した。Phenom II X6シリーズの大きな特徴は、6コアCPUでありながら安いこと。Core i7-980X EEが約10万6000円と非常に高価なのに対し、Phenom II X6 1090T BEは3万5000円、同1055Tなら2万2000円とさらに安価だ。

3コア以上がアイドルのときに動作周波数を400MHz引き上げる

 さらに今回のPhenom II X6シリーズは、新機能として「Turbo CORE」を搭載した。IntelのTurbo Boostに似た機能で、3コア以上がアイドル状態になったときに、3コアのみ動作周波数を高める。Phenom II X6 1090T Black Editionは最大3.6GHz、同1055Tは3.3GHzで動作する。ただコア数の切り替えは3コアと6コアのみ。標準状態では、1コアがアクティブのときに動作周波数を大幅に引き上げる、といった設定にはなっていない。IntelのTurbo Boostの場合、例えばCore i7-980X EEだと3個以上のコアを使用する場合は1コア当たり133MHz、使用するコアが2個以下だと266MHz引き上げるなど、段階的に切り替わる。

 Phenom II X6 1090T BEと価格面で競合しそうなのは、Core i7-930(実勢価格は2万9000円)や同860(実勢価格は2万6400円)だろう。Hyper-Threadingによる仮想8コアと真の6コアではどちらがどれだけ性能が高いのかが注目点の1つだ。

 Phenom II X6 1055TはCore i7-750(実勢価格は1万9500円)がライバルになると考えられる。Core i7-750はHyper-Threadingを搭載しておらず4コアCPUとして動作する。標準の動作周波数は2.66GHzでTurbo Boost時は最大3.2GHzで動作する。動作周波数は同クラスだがコア数はPhenom II X6 1055Tが勝る。

 これまでAMDのデスクトップPC向けCPUの最上位モデルだったPhenom II X4 965 BEは、十分値下がりしており実勢価格は1万7000円程度。こちらは4コアだが、動作周波数は3.4GHzと高い。新機能のTurbo COREの効き方も含め、Phenom II X4 965 BEと比べてPhenom II X6シリーズの性能がどれだけ伸びたかも気になるところだ。

 今回のテスト環境は次の通りだ。

●テストに使用したパーツ
マザーボード LGA1366はGA-X58A-UD5(GIGABYTE TECHNOLOGY、Intel X58搭載)、LGA1156はGA-P55A-UD5(GIGABYTE TECHNOLOGY、Intel P55搭載)、Socket AM3はCrosshair IV Formula(ASUSTeK Computer、AMD 890FX搭載)
メモリーLGA1366はDDR3-1066 2GB×3、LGA1156とSocket AM3はDDR3-1333 2GB×2
起動ドライブF100(Corsair、SSD 100GB)
グラフィックスボードAX4350 256MD2-S(Tul、ATI Radeon HD 4350搭載)
電源ユニットM12D(Sea Sonic Electronics、定格出力850W、80 PLUS SILVER取得)
OSWindows 7 Ultimate 64ビット日本語版

 マザーボードはASUSTeK Computerの「Crosshair IV Formula」を使用した。今回AMDが同時に発表した「AMD 890FX」チップセットを搭載した製品で、オーバークロックに特化した作りが売り。実勢価格は3万1000円だ。BIOSのバージョンは、Crosshair IV Formulaの発売時に適用されているという「0602」。AMDは報道機関向けの文書で「0602は性能の低下が見られるため『0505』を推奨する」としていたが、ASUSTeK Computerに確認したところ「0602が性能と安定性を高めたバージョン」とのことだった。0505を適用した状態でも測定したところ、0602適用時との性能差はほとんどのテストで±1%以内。2項目ほど2~3%変動したが、著しい性能低下は認められなかった。今回は、より新しい0602でテストした。

 CPUは以下のモデルを評価した。

  • Phenom II X6 1090T Black Edition(3.2GHz)
  • Phenom II X6 1055T相当(2.8GHz)
  • Phenom II X4 965 Black Edition(3.4GHz)
  • Core i7-980X Extreme Edition(3.33GHz)
  • Core i7-960(3.2GHz)
  • Core i7-930(2.8GHz)
  • Core i7-860(2.8GHz)
  • Core i5-750(2.66GHz)

 今回、Phenom II X6 1055Tのサンプル品は入手できなかったので、Phenom II X6 1090T Black Editionのサンプルを使って、BIOSメニューで基準動作周波数の倍率を14倍に下げ、動作周波数を2.8GHzに下げた「相当品」とした。Crosshair IV FormulaのBIOSメニューでは、Turbo Boostで上昇する動作周波数を基準動作周波数の倍率で指定できた。Phenom II X6 1055Tの相当品では、Turbo CORE時の動作周波数が3.2GHzになるよう倍率を16倍に設定した。

 この設定は本来のPhenom II X6 1055Tの仕様とは異なっていました。本来はTurbo CORE時に3.2GHzではなく3.3GHzで動作します。以下の結果は「3.2GHzに設定したときの値」としてそのまま掲載しますが、Phenom II X6 1055Tを入手して再テストを実施したので、そちらの記事を参照してください。(6コアCPUの下位モデル、Phenom II X6 1055Tを再テスト

 IntelのCPUは、先に述べた最上位のCore i7-980X EEのほか、標準の動作周波数がPhenom II X6 1090T BEと同じ3.2GHzのCore i7-960(実勢価格は約5万5000円)、Phenom II X6 1055Tと同じ2.8GHzのCore i7-930を試した。LGA1156は売れ筋のCore i7-860(2.8GHz)とCore i5-750(2.66GHz)だ。Intel製CPUは、いずれもTurbo Boostを有効にしている。

今回テストで使用したASUSTeK Computerのマザーボード「Crosshair IV Formula」(実勢価格は約3万1000円)。新チップセット「AMD 890FX」を搭載する。
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新機能として「Turbo CORE」を搭載。3コア以上がアイドル状態の際、TDPの枠内で残りの3コアの動作周波数を自動的に高める。Crosshair IV FormulaのBIOSメニューでは、適用の有無や上昇幅も設定できた。
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情報表示ソフト「CPU-Z 1.54」でPhenom II X6 1090T Black Editionの詳細を表示した。Turbo CORE有効時に3.6GHzまで動作周波数が上昇しているのが分かる。
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