青空文庫は、独自に整備した日本語組版用の書式設定タグをまとめた「注記一覧」と、これらのタグの使い方を解説したWebページ「組版案内」を2010年4月1日に公開した。併せて、独自形式のタグを含んだテキストファイルをXHTML形式のファイルに変換する、Rubyベースの変換プログラムの配布を始めた。自費出版や同人誌を電子書籍として発行したい人に向けたもので、青空文庫内部で使用している組版タグを使うことで、簡単に電子書籍を作成可能にすることを目指す。

 青空文庫は、著作権切れの文学作品をボランティアによる手入力でテキストやXHTML形式とし、インターネットなどで公開している。この際、底本の組版を画面上でなるべく忠実に再現するよう、字下げや改ページ、見出しなどの情報を独自形式のタグで入力してある。具体的には、[#3字下げ][#「上 先生と私」は大見出し]などのように、大カッコとシャープを付けた日本語のタグを盛り込んでいる。

 これまで独自タグは、入力や編集の作業を担う青空文庫のボランティアが内部でやり取りするためのフォーマットとして使っていた。しかし、米アップルのスマートフォン「iPhone」向けに青空文庫リーダーが複数提供されたことを契機に、内部フォーマットを整備・公開して誰でも使えるようにした。また、電子書籍への応用を視野に、将来使われる可能性のあるタグも追加した。

 注記一覧を公開することで、自費出版や同人誌の電子書籍発行のインフラとして青空文庫の日本語組版タグや青空文庫リーダーを活用できるようにする。また、米アップルのタブレット機「iPad」向けの青空文庫リーダーも開発が進んでいることから、iPad向けの簡易的な電子出版の手段として青空文庫を活用可能にすることも視野に入れている。

 注記一覧などを公開した背景について青空文庫の富田倫生氏は、「これまで、青空文庫で作ってきた電子書籍のファイルが社会の共有資源と思っていたが、注記ルールも青空文庫の成果の一つになりつつあることに気付いた。注記ルールを体系的にはっきり示せば、青空文庫リーダーの開発者も注記ルールに忠実に従って表示できるし、電子書籍を作りたい人も青空文庫のフォーマットを生かせる。電子書籍向けのフォーマットとしてはePubなどがあるが、日本語の組版情報をどのように実装して、画面上でどう再現するかはこれからの課題だ。青空文庫はそれと似たことを2002年ころから手掛けている。今後日本の電子書籍市場が立ち上がっていく際に、青空文庫の経験を生かしてもらえればと考えた」と日経パソコンの取材に対し語っている。