マイクロソフトは2009年3月10日、同社の企業向けクラウドサービスである「Microsoft Online Services」の試験運用を日本で開始した。これは「ソフトウエア+サービス」という同社の戦略に基づき、グループウエア関連のソフトをオンラインサービスとして提供するもの。米国では2008年11月に正式サービスがスタートしている。日本では、3月10日よりベータ版を無償で提供し、4月から正式サービスを開始する予定だ。

 第1弾として提供するのは、「Exchange Online」「SharePoint Online」「Office Communications Online」「Office Live Meeting」という4つのサービスと、これらを統合した「Business Productivity Online Suite(以下、BPOS)」。そのほか、文書の保存や暗号化、迷惑メール対策などを備えた「Exchange Hosted Services」も単体で提供する。

 Exchange Online、SharePoint Online、Office Communications Onlineの3つは、いずれも同社がソフトウエアとして提供する製品の機能を、オンラインサービスとしてクラウド上に移行したものだ。具体的には、電子メールやスケジュールの共有、設備予約などを実現する「Exchange Server」、ファイル共有や企業内ポータルサイトの構築、掲示板の運用などを実現する「Office SharePoint Server」、インスタントメッセージや在籍情報などを管理する「Office Communications Server」をそれぞれサービス化している。これに、ビデオ会議などを実現するOffice Live MeetingをセットにしたものがBPOSとなる。

 一般に、サーバーを自社運用すると、高機能なソフトをカスタマイズしながら、柔軟な運用が可能になる。半面、サーバー機器の導入や専任の管理者を設置するなど、運用コストが高くなる。一方、オンラインサービスを利用すると、カスタマイズは限定されたものとなるが、管理の手間や運用コストを大幅に削減し、迅速に導入できる。そこでマイクロソフトでは、Microsoft Online Servicesというブランドで企業向けのオンラインサービスを提供。従来からある自社運用型の製品と合わせて、両方のニーズに応える。

 マイクロソフト業務執行役員 インフォメーションワーカービジネス本部の横井伸好本部長は、「マイクロソフトの掲げる『ソフトウエア+サービス』というスタンスに変わりはない。従来型のソフトウエアとクラウド上のサービスのいいところを“融合”して現実味のある価値やソリューションを提供できる。これが『+』(プラス)の一つの意味だ。ただしもう一つ、厳密に言うと『+』ではなく『ソフトウエア or サービス』というべきものがあるかもしれない。必要なソフトが自社運用型でも提供され、クラウド上からも提供される、もしくは両者を組み合わせる。そのような“選択肢”をユーザーに提供することが、マイクロソフトの非常に重要な使命だと思っている」と、Microsoft Online Servicesを位置づける。

 提供の形態は「Standard」と「Dedicated」の2種類を用意する。Standardは、単一のインフラを複数の顧客が共有する形態で、早期の展開を必要とし、費用対効果を重視する企業に向く。またDedicatedは、企業ごとに専用のインフラを用意するもので、個別のカスタマイズなども可能。5000ユーザー以上の規模の大企業向けの形態となる。

 ユーザーのライセンスは通常版と機能制限版(Deskless)の2種類。BPOSの場合、前者では、Exchange Online、SharePoint Onlineの全機能を利用できるほか、Outlook 2007からも直接アクセスが可能。メールボックスの容量は1ユーザー当たり5GBとなる。後者ではExchange Online、SharePoint Onlineの一部機能を制限されるほか、Webブラウザー経由でのみアクセスできる。メールボックスも1ユーザー当たり500MBに抑えられる。

 価格は今のところ未定だが、米国ではStandard形態でのBPOSの通常版が1ユーザー当たり月額15ドル、機能制限版は月額3ドル。ユーザー数に応じて最大20%の割り引きがある。日本でもほぼ同じ価格を想定しており、詳細は3月中旬にWebサイトにて告知する。

 なお、こうした企業向けのクラウドサービスでは、障害が発生したときの保証が問題となるが、マイクロソフトではExchange OnlineやSharePoint Online、Office Communications Onlineの月間稼働率を99.9%とし、これを下回った場合は月額の利用金額を返金する。返金率は、月間稼働率が99.9%未満で25%、99%未満で50%、95%未満で100%。

 同社インフォメーションワーカービジネス本部 ビジネスオンラインサービスグループの磯貝直之マネージャは、「今までは、コストを削減しようとすると機能を抑えなければならず、機能を充実させるとコストが上がってしまい、二者択一が必要だった。これがBPOSの登場によって両立できるようになる。BPOSは、オンラインサービスに移行することでコストを削減できる上、Exchange SeverやSharePoint Serverの機能をそのまま利用して、その生産性を享受できる。ITコストの削減と業務効率の改善の両方を実現できる点で、そこらのオンラインサービスとは違う」と自信をのぞかせた。