マイクロソフトとメディア教育開発センターは2009年2月17日、ICT(情報通信技術)を活用した次世代教育を実証する「NEXTプロジェクト」の成果の一つとして、東京都港区立青山小学校において公開授業を実施した。同校では、2007年12月に無線LANを搭載した小型のタブレットPCを60台導入。1クラスが20~30人と少ない点を生かし、1人1台の環境でICTを活用した授業を実践している。

 公開授業に先立って行われた記者説明会では、メディア教育開発センターの清水康敬理事長が「ICTを活用すれば、確実に学力が向上することが示された」とICT活用の効果を説明。2008年に日本教育工学会論文誌に掲載された同氏らの論文を紹介しながら、ICTを活用しなかった場合に比べ、活用した授業後の方がテストの成績が高くなるというデータを示した。同様に生徒の学習意欲や思考、判断力も、ICTを活用した方が高まるという。

 また「今回の公開授業は、1つの夢の実現であり、さらに大きな夢へのステップである」と喜びを語ったのは、同校におけるICT導入に尽力した立命館大学教育開発推進機構の陰山英男教授。立命館小学校の副校長を兼任し、「百ます計算」を広めたことで知られる同教授だが、「子供たちが小学校に入ったら、文科省から1人1台ずつパソコンをプレゼントされる。そこには学習すべき内容がすべて入っていて、究極の個に応じた学習が達成される」という学習環境を夢に描いているという。今回のプロジェクトでは、その夢を具現化する1ステップとして、精力的にマイクロソフトや教育委員会に働きかけた。タブレットPCの大量導入を実現するために、マイクロソフトのビル・ゲイツ会長に中国で会い、直訴したというエピソードも披露。「文科省でも、新しい時代の教育ということで、ICTを活用する教育が本格的に考えられるようになってきた。その大きな突破口となるのが、この青山小学校の実践。この事業が東京、そして全国に広がっていくことを期待する」とした。

 同校の曽根節子校長は、「児童や教員のICT活用能力が向上し、学習意欲の喚起、基礎学力の向上、情報モラルの定着、企業や行政との連携によるICT環境の充実、家庭と地域への発信など、このプロジェクトのおかげで学校に元気が出てきたと実感している」とその成果を語る。

 公開授業では、2年生が生活科の授業として、青山の探検レポートを実施。デジタルカメラで撮影した駅や図書館の写真を電子黒板に投影しながら、街の様子を説明した。電子黒板は、プロジェクター用のスクリーンであると同時にタッチパネルの役目も果たすため、投影した写真をドラッグして動かしたり、必要に応じて拡大・縮小して見せたりするなど、インタラクティブなプレゼンテーションができる。写真の拡大・縮小には、マイクロソフトのWebブラウザー用プラグイン「Silverlight 2」の「Deep Zoom」機能が活用されていた。

 4年生の社会科の授業では、インターネットを通じたテレビ会議システムを使い、和歌山県和歌山市立有功東小学校の生徒と交流。360度のパノラマ映像で教室の風景を映し出しながら、東京都について調べたことをスライドで説明した。システムにはマイクロソフトの「RoundTable」を使用。発言者の映像は、自動的に拡大表示される。映像の更新が遅れるといったネットワーク上のトラブルもあったが、離れた場所にある学校の生徒とリアルタイムに情報を交換するという、ICTならではの授業を展開した。

 6年生の総合的な学習の授業では、文字だけのコミュニケーションによるトラブルを題材として、情報モラルのあり方が指導された。1人1台与えられたタブレットPC上に文字だけのメッセージを入力し、その言葉の検証や置き換えを試みる授業だ。入力はマイクロソフトの電子ノートソフト「One Note」で行い、内容はクラス全員で共有される仕組みとなっていた。

 6年生の授業の最後には、マイクロソフトの樋口泰行社長が教壇に立ち、情報技術のメリット・デメリットについて説明。「情報技術を使うとたいへん便利な半面、悪用する人がいるなどマイナス面もある。日本では、マイナス面ばかりが強調されるが、それをきっちり解決しながら、情報技術をプラス面で活用する必要がある。インターネットは悪いものだと決めつけることなく、今学んでいる情報モラルやネチケット、ルールなどをきっちり押さえ、その上で情報技術を活用することが非常に大事になってくる」と情報モラル学習の大切さを生徒に説明した。