インテルは2008年9月9日、デスクトップPCやノートPC向けのSSD(Solid State Drive)として「X18-M Mainstream SATA SSD」「X25-M Mainstream SATA SSD」を発表した。X18-Mが1.8インチHDD互換、X25-Mは2.5インチHDD互換で、80GBモデルを量産出荷中だという。1000個ロット受注時の卸価格はX18-M、X25-M共に6万5760円だ。2008年第4四半期中には160GBモデルもサンプル出荷する。

 日経WinPC編集部はX25-Mのサンプル品を入手、3.5インチHDDや2.5インチHDD、最新のSSDと読み書き性能を比較した。X18-M/X25-Mの主な仕様は以下の通りだ。

  • フラッシュメモリー:MLC(Multi Level Cell) NAND型、10チャンネルパラレルアーキテクチャー
  • 読み書き速度:最大読み出し250MB/秒、最大書き込み70MB/秒
  • リードレイテンシー:85マイクロ秒
  • インターフェース:Serial ATA 1.5Gbps、同3Gbps(Serial ATA Revision 2.6)、NCQ(Native Command Queuing)対応
  • 消費電力:アクティブ時0.15W、アイドル時:0.06W

 最大の特徴は読み出しの速さだ。現行のSSDは実効速度で最大100M~150MB/秒の製品が多く、200MB/秒を超える速度を出すには2台のSSDをRAID0(ストライピング)するしかなかった。X18-M/X25-Mの順次(シーケンシャル)読み出しは単体で250MB/秒、ランダムでも170MB/秒と非常に速い。書き込み速度の70MB/秒も優秀だ。SSDはHDDに比べて書き込みが遅い傾向にある。特にMLCタイプの安価な製品だと、HDDの半分以下の速度しか出ない製品も珍しくない。

 果たしてこの仕様は本当だろうか。以下のPCを使って、X25-Mの速度を調べてみた。

  • 【CPU】Core 2 Duo E6850(3GHz)
  • 【マザーボード】P5K Premium Wi-Fi AP Edition(ASUSTeK Computer、Intel P35搭載)
  • 【メモリー】DDR2-800 1GB×2
  • 【HDD】WD5000AAKS(Western Digital、起動用ドライブ)
  • 【グラフィックスボード】PV-T88S-FDD(PINE Technology、GeForce 8800 GS搭載)
  • 【OS】Windows Vista Ultimate Service Pack 1 32ビット日本語版

 テストに使ったのはSiSoftwareの「Sandra XII.2008」。その中の「File Systems」という順次とランダムの読み書き速度を調べるテストを実行した。その結果がグラフ1だ。X25-M以外に、SLCタイプのSSD、安価ながら速いと話題のPatriot Memory製SSD、1万5000円程度という安さが売りのCFD販売製SSD、さらにHDDとして1万回転/分のWD VelociRaptor、7200回転/分で高速なWD Caviar Black、2.5インチHDDの平均的なモデルでの測定結果も掲載した。

 見ての通り、X25-Mの順次読み出しは252MB/秒。ランダム読み出しも172MB/秒で、ずば抜けて速い。書き込みは読み出しほどではないが、MLCのSSDとしては良い数字だ。このSandraのテストでは、Patriot製やCFD製のSSDはランダムと順次の書き込み速度の差が大きく、5400回転/分の2.5インチHDDには及ばない性能を示したが、X25-Mは速度差が小さく2.5インチHDDを上回る性能だった。

OSの起動時間は意外に差が付かない

 では、OSの起動時間やアプリケーションベースのベンチマークテストはHDDと比べてどうなるのか。X25-MとWD VelociRaptor(WD3000GLFS)、Seagate Technologyの3.5インチHDD「Barracuda 7200.11(ST3640323AS)」にWindows XP Professional Service Pack 3やWindows Vista Ultimate Service Pack 1をインストールして起動時間を測ってみた。なお、機材の都合でメモリーはDDR2-800の1GB×1に減らしている。また、自作PCにおける起動時間は接続しているデバイスやマザーボードのBIOS設定により大きく変わる。この結果は、今回テストした環境での参考値としてとらえてほしい。

 Windows XPはPCの電源ボタンを押してからマウスポインターが砂時計から矢印に変わるまで、Windows Vistaは電源投入からポインターが丸から矢印に変わるまでをストップウオッチで手動計測した。電源投入からOSが読み出され始めるまでの、POST(Power On Self Test)時間はどのストレージでも同じ。差が付くのはOS読み出しからだ。グラフ2がその結果だ。ほぼ仕様に沿った形になったが、Sandraで確認した読み出し性能ほどは起動時間に差が付いていない。

 これは、OS起動中もデバイスの初期化待ちやネットワークの設定など、ファイルの読み出し以外の待ち時間がそれなりにあるためだろう。「読み出しが250MB/秒もあれば、あっという間に起動するのでは?」という期待を持つ人には残念な結果だ。ちなみにWindows XPではAHCIを有効にした状態でも計測したのだが、なぜかBarracuda 7200.11が正しく動作しなかったためグラフは掲載しなかった。ただ、AHCI有効状態でのX25-Mの起動時間は49.03秒、WD VelociRaptorは55.07秒と、AHCI無効状態との差は1秒以下だった。

 各デバイスにWindows Vista Ultimateをインストールした状態で、それぞれFuturemarkのベンチマークソフト「PCMark Vantage」を組み込んで実行、総合スコアを調べてみた。PCMark Vantageは「TV and Movies」「Gaming」「Communications」など、PCの使い方に合わせた各種のテストの組み合わせで性能を測る。テストによりCPU、メモリー、グラフィックス、HDDを使う割合が変わるという、現実のアプリケーションの挙動を模したテストだ。

 その結果をグラフ3に示す。Barracuda 7200.11からWD VelociRaptorで約1割スコアが伸びているのに対し、X25-Mは7200.11に比べて4割以上もスコアが高い。スコアを後押ししているのは、もちろんストレージ周りの処理だ。結果の詳細を見てみると、例えばデータ読み出し性能を測る「HDD gaming」のテストは、7200.11に比べて9.2倍、Windows Media Player 11に音楽ファイルを追加する「HDD adding music to Windows Media Player」は9.1倍、「Word 2007」「Photoshop CS2」「Outlook 2007」などのアプリケーションを読み出し「HDD application loading」は22倍といった結果になっている。

 X25-Mはストレージデバイスとして相当に速い。気になるのは実勢価格だが、公表された卸価格が6万5760円であることを考えると、店頭では7~8万円といったところだろう。冒頭のベンチマークテストでも取り上げたPatriotのPE64GS25SSDRは64GBで3万5000~4万円。X25-Mが価格性能比で優れているか、と言われると難しいところだ。ただ、読み書き性能の高さは魅力。SLCタイプの大容量モデルが非常に高価なことを考えると、大容量かつ書き込みも高速なSSDが欲しい人にとって、X25-Mは筆頭候補に挙がるモデルと言えるだろう。

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  • ●ベンチマークテストの概要
    ■Sandra XII.2008  SiSoftwareが開発しているPC情報表示とベンチマークテストのソフトウエア。アプリケーションの総合的な実行性能ではなく、CPUやメモリー、ドライブ、ネットワークなどコンポーネント単位の性能を調べるのに適している。ドライブ性能を調べる「File Systems」では、順次(シーケンシャル)とランダムの読み出しや書き込み性能が調べられる。このテストはCPUやメモリー性能はあまり影響しない。
    ■PCMark Vantage  Futuremarkのベンチマークソフト「PCMark05」の後継でWindows Vistaで動作する。PCMark05がCPUやメモリー、グラフィックス、HDDなど各機能の性能を測っていたのに対し、PCMark Vantageでは「TV and Movies」「Gaming」「Music」「Communications」「Productivity」など、PCの使い方に合わせた各種のテストの集合体でスコアを出すようになった。
     テストの構成上、個別のパーツの性能だけを測定するのは向かない。システム全体の処理性能は「PCMark Suite」を実行して得られる総合スコアとして示される。PCMark Suiteは画像処理やエンコード、Webページの描画など複数の処理を連続して実行した結果算出されるもので、テストごとにCPU、メモリー、HDD、グラフィックスのどの要素が影響するかは異なる。