2008年4月下旬、IntelのデュアルコアCPUの新モデル、Core 2 Duo E7200が発売になった。E7000シリーズは、Core 2 Duoシリーズ内での低価格機向けであるE4000シリーズの後継で、上位のE8000シリーズやクアッドコアのQ9000シリーズと同じく、最新の45nmプロセスで製造されている。日経WinPC編集部はCore 2 Duo E7200を入手し、同じような周波数のCore 2 Duoの各モデルと性能や消費電力を比較した。

 65nmプロセスで製造したE4000シリーズは、上位のE6000のFSB(Front Side Bus)や2次キャッシュ容量を抑え、仮想化機能を省略したモデルだった。E6000のFSBが1066MHzまたは1333MHzだったところ、E4000は800MHz。2次キャッシュ容量は、E6000が2MB(初期のモデル)か4MBなのに対してE4000では2MBになっていた。E7000は、同様にE8000の「性能抑制版」。FSBはE8000の1333MHzに対し1066MHz、2次キャッシュ容量はE8000の6MBを半分にした3MBとなっている。拡張命令のSSE4.1に対応する点や、45nmプロセス版で改良された演算器はE8000シリーズと共通だ。

 E7200はベース周波数の266MHzの9.5倍である2.53GHzで動作する。45nm版としては最低クラスの低価格機向けとはいえ、2006年7月に登場した初期のCore 2 Duoと比べると同等かそれ以上の仕様となっている。最新で売れ筋のE8400からどれだけ性能が落ちるかだけでなく、一世代前の売れ筋のE6750や、初期のE6600、E6700などとどれだけ性能が違うのかが気になるところだ。

 テストに使用したパーツは以下の通りだ。

【マザーボード】GA-P35-DS3R(GIGABYTE TECHNOLOGY、Intel P35搭載)
【メモリー】DDR2-800 1GB×2(JEDEC準拠)
【HDD】Barracuda 7200.10 320GB(Seagate Technology)
【グラフィックスボード】Radeon HD 3850搭載ボード(レファレンス)
【OS】Windows Vista Ultimate Service Pack 1 32ビット日本語版

 CPUは、低価格機向けで前世代のE4600(2.4GHz、FSB800MHz、2次キャッシュ容量2MB、製造プロセス65nm)のほか、初期のモデルであるE6600(2.4GHz、1066MHz、4MB、65nm)とE6700(2.66GHz、1066MHz、4MB、65nm)、一世代前でまだ販売中のE6550(2.33GHz、1333MHz、4MB、65nm)とE6750(2.66GHz、1333MHz、4MB、65nm)、最新で売れ筋のE8400(3GHz、1333MHz、6MB、45nm)をテストした。いずれもデュアルコアCPUだ。

E6700、E6750と並ぶ性能、E4600よりは格段に速い

 まずは、メモリー転送速度のテスト結果を示す。グラフ1は、SiSoftwareの「Sandra XII SP2」におけるメモリー転送速度を測るテストの結果だ。グラフは2007年後半の売れ筋だったCore 2 Duo E6750の結果を100%とした相対値で示している。かっこ内の数値が、テストのスコアや測定値になっている。このテストは単なるバスの速度だけでなくCPUの動作周波数や命令の実行効率も影響する。E7200は同じFSBで動作周波数が高いE6700よりも良い結果が出ているが、FSB1333MHzのE6550には及ばない。直接の前世代モデルとなるE4600よりは格段に速い。

 次は3Dレンダリングのベンチマークソフト「CINEBENCH R10」の結果だ(グラフ2)。このテストでは、コア数や動作周波数のほか、45nm版で施された演算部分の改良が反映されやすい。半面FSBの影響はあまり大きくない。E7200は、E6700やE6750に匹敵する結果となった。3D画像の描画処理も似たような傾向だ。グラフ3は「3DMark06」の結果。上側のグラフは、CPU性能によってほぼ決まるCPU関連テストの結果。下側のグラフは、グラフィックスボードの違いが大きく影響する総合テストの結果だ。E6750にはほんのわずかに劣るものの、E6700とほぼ同等で、E6550やかつての売れ筋E6600、E4600よりは1割程度は速くなっている。

 3D描画性能は市販ゲームでも調べた。グラフ4は、DirectX 10対応のアクションゲーム「クライシス日本語版」でベンチマークを実行したときのフレームレート(fps)の違いだ。最新の修正プログラムを適用した上で、画面周りの設定はすべて「中」、解像度は1280×1024ドットにした。ソフトに同こんされているベンチマーク用のデモ「Benchmark_GPU.bat」を実行し、「Average FPS」(1秒間当たりに描画したフレーム数の平均)のうち最も良い値を調べた。上位CPUとの比較では、明確に優劣を語れるほどの差は出ていない。唯一はっきりしているのはE4600が遅いこと。E7200は、この手の処理でもE4600より速くなったとは言える。

 アプリケーションベースの総合ベンチマークとしては「PCMark05」を実行した(グラフ5)。PCMark05は市販のアプリケーションで使われているプログラムなどを基にして、パーツの処理能力を測定する。CINEBENCHやSandraよりも現実のアプリケーションの振る舞いに近い動作だ。ここまでほぼ同等だったE6700、E6750に比べてE7200はやや低めの結果になった。とはいえ、動作周波数の低いE6550やE6600、E4600に対しては優位性を保っている。

 最後に動画エンコードの結果を示す(グラフ6)。ペガシスの動画変換ソフト「TMPGEnc 4.0 XPress」において、ソニーのHDVカメラで撮影した1440×1080ドット、1分間のMPEG-2 TSファイルをアスペクト比16:9、Windows Media Video 9 Advance ProfileでWMV形式に変換する処理だ。相当負荷が高く、デュアルコアのこのクラスのCPUだと実時間の10倍ほどの時間がかかる。E7200はコアの改良が効いたのか、少しだけ動作周波数が高くキャッシュ容量の多いE6700と並ぶ結果となった。売れ筋だったE6750との差はわずか2%なので、低価格機向けとしてはなかなかの結果だ。

負荷時の消費電力が低いE7200、製造プロセス45nmの効果か

 グラフ7はシステム全体の消費電力を測定した結果だ。負荷時は、「PCMark05」で4スレッドを同時に実行する「Multithreaded Test 2」の値だ。今回はグラフィックスボードにミドルクラスの「Radeon HD 3850」を使ったため、全体的に消費電力が高めになっている。

 E6700の消費電力が高いのは、初期Steppingの個体だからだろう。Intelは、同じ65nmプロセスでも後期のSteppingの方が消費電力が低い製品の割合が多いとしている。また、個体ごとに動作電圧や漏れ(リーク)電力が異なるため、同じプロセッサー・ナンバーの製品でも消費電力にある程度の差がついてしまう。例えば今回のテストでは、2.33GHzのE6550の負荷時の消費電力は、2.66GHzのE6750より高い。E8400は、45nmプロセスの効果か、動作周波数が低いE6750よりも負荷時の消費電力が低くなっているが、アイドル時は不自然なほど消費電力が高い。こうした個体差を考慮しても、E7200の負荷時の消費電力は相当に低いと言ってよいだろう。処理によっては、ほぼ同じ性能を示すE6750よりも20Wも低いのだ。

 ラインアップ上の差異化のため、デュアルコアの主力であるE8400とは明確な性能差が付けられているものの、E7200は前世代の主力に匹敵する実力がある。2008年4月25日時点のE7200の実勢価格は1万5000円前後。E4600はほぼ同じ価格、E6550は1万8000円前後なので、これらを買う理由は全くない。E6750は1万9000円前後で販売中だが、4000円分の性能差があるとは思えないし、消費電力はE7200の方が低いので、もはやE6750も選ばなくてよいだろう。

 キャッシュを本来の仕様から削減したバージョンのCPUは、自作PC市場ではあまり人気がないことが多かった。キャッシュ容量が少ない過去の製品は、特定の処理だと性能が顕著に落ちることがあったのも事実だ。しかしE7200の3MBという容量はそれほどバランスが悪くないようだ。1万円台で性能と消費電力のバランスに優れたCPUを買いたい人にとっては、E7200は良い選択肢であると言えそうだ。