電源ユニットには、さまざまな略語や用語が使われていて、意味が分かりにくい。主なものを解説しよう。

 まず電源ユニットの規格だ。一般に「ATX電源」などと呼んでいるが、規格の名称は「ATX12V」だ。より正確に言えば、メインコネクターを24ピンに拡張してあるため規格名は「ATX12V Ver.2」である。

 グラフィックスボードに直接装着するPCI Express専用コネクターは、電源ユニットの規格ではなく、PCI Expressの規格で定められている。製品選びの際には、規格名よりもコネクターの種類と数、ケーブルの長さを確認しておこう。

●電源ユニットの規格で定めている範囲
一般に「ATX電源」と呼ばれているが、最近の製品はATX12V Ver.2以降かEPS対応であることが多い。グラフィックスボードに接続するPCI Express用の電源はATX12Vでは定められておらず、EPSの規格書に記述がある。一方、Serial ATA用の電源コネクターはEPSだとオプション扱いだ。規格名はあくまでも目安。
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保護回路やPFC回路を備えると何がいい?

 電源ユニットで特に略語が多いのは、保護回路と対応している安全規格についてだ。保護回路は種類が多いと、安心感が高い。現在では多くの電源ユニットが過電流保護や過負荷保護、ショート回路保護などの機能を備えている。落雷時に発生するサージ保護は、製品によって搭載/非搭載が分かれる。ただし保護できる能力にも限度があるし、万能ではないので過信しないようにしよう。

 保護回路とは違うが、多くの電源ユニットがPFC(力率改善)回路を備えている。PFC 回路は「電源の利用効率を高める」と紹介されることが多いが、電源ユニット自体の利用効率は高くならない。主としてノイズ対策のためで、電源を供給する設備に対する負荷を低減する効果がある。

 「UL」「CE」などの安全規格は、該当する国で販売する際に対応が求められる。従って対応している安全規格の種類は気にしなくてよい。

 +12Vについてよく聞くのが「シングルレーン」と「デュアル(マルチ)レーン」だ。+12Vの電源を生成する回路の系統数を指している。系統を分けると過電流や過負荷に対する保護を効かせやすくなり、安定性を増すことができ、Intelはこちらの方式を推奨している。しかし電力を効率的に配分するなら、1系統で全てまかなった方がよい。これがシングルレーンの考え方だ。現在ではグラフィックスボードの負荷が増大しているため、出力の大きな電源ユニットでは事前に負荷の範囲を限定するマルチレーンではなく、シングルレーンを採用するものも多い。

●電源ユニットが搭載している主な保護回路
最近の多くの電源ユニットは、こうした保護回路を備えているので、例えばSerial ATAの電源ケーブルを斜めに挿しても簡単に発火しない。保護回路の種類が多い方が安心感はある。ただし、こうした回路は万能ではないし、電源ユニット自体が壊れた場合などは、有効に働くとは限らない。過信は禁物だ。
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●PFC(力率改善)回路の意味
PFC回路が無いと、ピーク電圧の周辺のみで電流が流れることになりノイズの発生源になる。PFC回路があると無効電力が無くなりノイズが減る。電源供給側の設備に対する負荷を下げる機能だ。効率には関係無く、PFC回路があることでむしろ消費電力が増える。


●シングルレーンとデュアルレーンの違い
「シングルレーン」と「デュアル(マルチ)レーン」は+12Vの系統の数を示す言葉。基本的には電源電圧を生成している回路の数が異なる。デュアルレーンでは+12V V2がCPU専用で、+12V V1をその他の回路で使う。系統を分けると過電流や過負荷を両立させやすい。シングルレーンは+12Vが1系統。マルチレーンの個々の系統に比べて電流の上限値が高く、CPUやグラフィックスボード、ストレージなどに柔軟に電力を配分できる。複数の出力があるように見えて、実は1つの電源系統であることを「コンバイン出力」と呼んでいる。一般に+5Vと+3.3Vも1つの系統から生成している。
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出典:日経WinPC 2012年3月号
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。