いとう・えいき:東京大学理学部卒、同大学院情報工学専門課程修了。1988年富士通に入社、CPU設計などに携わり、2011年12月から富士通研究所勤務。1998 年から将棋ソフト開発に取り組む。コンピューターの演算処理を飛躍的に高める並列処理に取り組み、2011年5月、将棋ソフト「ボンクラーズ」で世界コンピュータ将棋選手権に優勝。2012年1月、同ソフトで米長邦雄永世棋聖を破る。(撮影:稲垣 純也)
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 将棋ソフトが、男性プロ棋士との公式対局で初の勝利。それも、かつて「名人」として将棋界の頂点を極めた米長邦雄永世棋聖を破ったというのだから、実力は本物だ。国内で1970年代に将棋ソフトの開発が始まって以来、プログラマーたちが長年の夢にしてきた目標を、2012年1月、伊藤英紀氏がついに達成した。

対戦はボンクラーズの指し手を盤上に再現する形で行われた。米長永世棋聖はあらかじめ研究に研究を重ねて対局に臨んだ
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中盤の手詰まり状態では、ボンクラーズは何手にもわたって飛車を左右に移動。手損になるためプロ棋士は絶対に指さない手だが、ボンクラーズは以降の展開も読み切っていたようだ(画面は将棋ソフトで再現)
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 高校時代には将棋部に籍を置いた将棋好き。勤務する企業でCPUの設計などを手掛ける一方、14年ほど前から“サンデープログラマー”として将棋ソフトの開発に取り組んできた。しかし、将棋ソフトの甲子園とも言える「世界コンピュータ将棋選手権」に何度かチャレンジしたものの、予選止まりでなかなかトップクラスに食い込むことができなかったという。

 「発想の転機になったのは2007年、渡辺明竜王と将棋ソフト『ボナンザ』の戦いを見たこと」だった。将棋ソフトは惜敗したが、従来にない善戦。多くの棋譜データから最善な形勢判断を引き出す「機械学習」、あり得る指し手を幅広く読む「全幅探索」というテクニックが強さの秘密だった。

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