あんじょう・けんいち:1954年生まれ。1982年に九州大学大学院理学研究科を修了。日立製作所でコンピューターグラフィックスの研究開発に取り組む。2000年、映像制作会社のOLMデジタルに移り、現在、取締役。一貫してCGの研究開発に取り組み、アニメーション作品、映画・テレビの実写作品などでCG効果のディレクションも手掛ける。代表的な担当作品は「ポケットモンスター」映画シリーズ、「劇場版イナズマイレブン 最強軍団オーガ襲来」など。2010年より文部科学省の戦略的創造研究推進事業(CREST)「デジタル映像数学の構築と表現技術の革新」研究代表者。(撮影:稲垣 純也)
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 画面いっぱいに広がる麦畑が風に揺れている。広々とした風景が映画館のスクリーンにリアルに映し出される。2009年に公開された「ポケットモンスター」映画版のワンシーンだ。手描きではとても不可能な精細なCGを、違和感なくアニメーション作品の中に入れ込む。その技術開発の第一人者が安生健一氏だ。「コンピューターでシミュレーションした映像をいかに自然に見せるか、いかに作品の映像になじませるかがとても大切」と言う。

 同氏のチームがこれまでに手掛けた独自のCG技術は数多い。1枚の絵から3D空間を作り出す技術。麦畑や花畑など細かい風景をリアルに描写する技術。岩が割れるシーンをコンピューター演算で簡単に作る技術。3Dモデルから作った「リアルすぎる」絵を手描き風のアニメに修正する技術──。CG合成は今やアニメーション制作に広く取り入れられているが、既成ツールでは対応しきれない新たな表現を追求してきた。「これまでクリエーターがやりたくてもできなかった表現を、CGを使って実現したい」。

広がる麦畑は全てCGで制作。手前に麦の3Dモデルを配置し、後方には画像データを多数敷き詰め、全体に風が吹いているように揺らす効果を出した(劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド&パール「アルセウス 超克の時空へ」から) (c)Nintendo・CREATURES・GAMEFREAK・TV TOKYO・SHO-PRO・JR KIKAKU (c)Pokemon (c)2009 ピカチュウプロジェクト
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3Dモデルを基に2次元の絵を作るトゥーンシェーダーを改良。3Dモデルのリアルな陰影(左)を手描きでアニメ風に修正できるようにした(右)

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