国は2009年度の補正予算で「スクール・ニューディール」構想を掲げ、教育現場でのICT(情報通信技術)環境の整備を進めた。

 さらに、2010年度には総務省が新プロジェクトの「フューチャースクール」を開始。全国10カ所の小学校に生徒1人1台のタブレットPCやネットワーク環境などを整備して、教育現場のICT活用について実証実験を行う。

 教育の情報化に関する国内の第一人者で、フューチャースクールプロジェクトの研究会の座長でもある東京工業大学の清水康敬監事・名誉教授に聞いた。

■学校教育の情報化を進める上で、一番のポイントは何ですか。

 重要なのは、教員のICT活用能力の向上です。スクール・ニューディールによって、教育現場の設備や機材などはかなり充実しました。それらが実際に導入された今年、子どもたちの学力向上に向けて何を行うか、教員の取り組みをどう進めるか、きっちり考えて実践する必要があります。

 多くの教員が、ICTを活用すれば子どもの学力が向上することを実感し始めています。今後、教員の指導力が向上すれば、さらにステップアップできます。

 ただ、いきなり「さあ使ってください」と言われても、教員が対応できるわけではありません。そこで活用してほしいのが、2009年3月に文部科学省が作成・配布した「教育の情報化に関する手引」です。現在は小中学校版だけですが、近いうちに高等学校版も含めた統合版が出る予定です。

■フューチャースクールプロジェクトは何を目指しますか。

 フューチャースクールは、ICTによる教育改革を推進するため、総務省が文部科学省と連携して実施するプロジェクトです。これを具体的に検討する場として「ICTを利活用した協働教育推進のための研究会」が発足しました。

 研究会が目指すものは大きく2つと考えています。一つは、諸外国に比べ遅れている日本のICT教育の目玉となる「フラッグシップ」を作ること。もう一つは、今回の取り組みがベースとなり日本の教育界全体に普及するよう、フューチャースクールをきっかけにすることです。

 国内を見ると、ICT教育の普及の度合いもレベルも、着実に上がってきています。ただ、現場の教員が、将来の教育がどうなっていくのかをイメージするにはフラッグシップが必要です。

 ICT教育の従来の取り組みは、日本のすべての学校、すべての教員、すべての子どもを対象に、粛々と進められています。これに対しフューチャースクールは、10校で10億円という、今までなら考えられない規模の予算が当てられるプロジェクトです。各校の目的はそれぞれ違っていても、10校全体では同じゴールを目指します。

 そのためのキーワードが、児童が教え合い、学び合う「協働教育」です。このビジョンを踏まえ、子どもたちの学習はどうなるのか。教員はどう指導するか。それらを実証的に見ていくのがこのプロジェクトです。

 ただ、プロジェクトを10校で3年やりました、素晴らしい成果でした、よかったですね、で終わらせてはいけません。10校での成功は当面の目標ですが、せっかくのパイロットプロジェクトを10校で終わりにするのではなく、すべての学校にどう普及させるかが重要です。

 フューチャースクールの成果は、ガイドラインとしてまとめます。新しい時代の教育機材をどう導入すればよいか、教員にどんな研修を行い、効果をどう判断するかなど、教育関係者が「なるほど」とひざをたたくような、ICT活用の推進につながるガイドラインにしたいと考えています。

 パイロットプロジェクトを実施する総務省の結果を受け、文部科学省が、教育全体の推進を担う立場でまとめ上げることになるでしょう。

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