スペインのバルセロナで2010年2月15日に開幕する、世界最大級の携帯電話に関する展示会「Mobile World Congress 2010」(以下、MWC)。開催に先立ち、主要な出展予定メーカーの日本法人を取材した。

 米エヌビディアは、パソコン用のグラフィックスチップ「GeForce」で知られており、スマートフォンや小型情報端末向けのCPU「Tegra」も手がける。同社が得意とするグラフィックス機能を内蔵した点に特徴がある。日本のエヌビディアのテクニカルマーケティングエンジニアであるスティーブン・ザン氏に、Tegraの強みについて話を聞いた。

■そもそも、Tegraを開発した狙いは何か。

 従来のスマートフォンや小型情報端末には、性能がボトルネックになるという大きな問題点を抱えていた。パソコンと同じ機能を実装することができず、結果として使い勝手がパソコンより劣ってしまう面が否めなかった。それを解消するCPUとして開発したがのTegraだ。パソコンで見ているのと同じ状態のWebページをフルサイズでスピーディに表示でき、ハイビジョン動画をストレスなく再生できる高速性を実現した。肝心なのは、省電力性も両立できている点にある。

 2010年、Tegraは第2世代へと進化を遂げる。最新型では、英ARMのCortex-A9 MPCoreをベースとする、マルチコア技術を採用した動作周波数1GHzのモデルが主力。性能は、通常の携帯電話に比べて約10倍の処理能力を備える。内蔵しているグラフィックス機能は、弊社が得意とする部分であり、抜かりはない。米マイクロソフトのゲーム機「Xbox 360」に匹敵する性能がある。OpenGLなどの3Dグラフィックス向けAPIも多数サポートしており、30フレーム/秒以上で動画やアニメなどを再生することが可能だ。1080p対応の動画については、デコードして再生するだけでなくエンコードもできる。

■スマートフォンメーカーなどにとって、電力消費の低減は開発上の大きな課題だ。

 もちろん、消費電力についても考慮してある。最新型Tegraが動作中に消費する電力は、わずか500ミリワットに抑えてある。内部的には8個のプロセッサーに分かれているのだが、それぞれのプロセッサーをオン・オフできる工夫を施した。処理に必要なプロセッサーだけが動作するので、結果として大幅に消費電力を低減できた。一般的な実装なら、楽曲を140時間、ハイビジョン動画なら16時間連続して再生できるはずだ。

 グラフィックス用のプロセッサーには、さらに工夫がある。米アドビシステムズの「FLASH PLAYER 10.1」の表示をアクセラレーションする機能を盛り込んでいる。Web上のさまざまなFlashコンテンツをスピーディに表示できるだけでなく、表示に伴う電力消費を極力抑えられる。例えばあるFlashコンテンツをパソコンのCPUが表示する場合と比べると、約100分の1で済む。

■スマートフォンや小型情報端末以外へは採用を働きかけないのか。

 そんなことはない。家電など、グラフィックスを必要とする機器なら、ジャンルを問わずTegraをアピールしていきたい。すでに、興味深い採用例が出始めている。例えば台湾D-Linkの「Boxee Box」。米ボクシーが提供する「Boxee」と呼ぶ、インターネット上にある種々雑多な動画を横断的に再生できるサービスがある。そのコンテンツをテレビで見るための専用装置の心臓部は、実はTegraが担っている。

 ドイツの自動車メーカーであるアウディは、2010年から全車種について弊社のグラフィックスプロセッサーを活用し、米グーグルの地図サービス「GoogleEatrh」を表示できるカーナビを搭載することを明らかにした。さらに2012年からは、Tegraを採用することを決めている。従来にはない、高性能なカーナビや、より高度な音楽や動画といったエンターテインメント機能などを実装する見込みだ。Tegraが画面データを2系統同時に出力できる特徴を生かし、例えば助手席と運転席に設置したディスプレイに、別々の映像を表示することも検討していると聞いている。

 最近タブレット型の小型情報端末に注目が集まっているが、すでに50社以上がTegraを採用した小型情報端末の開発を進めている。2010年には、さまざまな製品が市場で発売されるのではないかと期待している。