携帯電話をあたかも「iPod」であるかのようにする新種の無料ソフトが米国から上陸した。その名は「doubleTwist」。米アップルの音楽再生ソフト「iTunes」との互換性がウリの、マルチメディアデータ管理ソフトである。開発したのは米ダブルツイストでCTOを務めるヨン・レック・ヨハンセン氏だ。ノルウェー出身のプログラマーで、かつてDVDのデジタルコピー防止用暗号化技術であるCSSを解除してしまうソフトを開発したことで知られる。「DVDヨン」という異名がある有名なハッカーである。

 ハッカーが手がけたdoubleTwistではあるが、CSSを解除するといったトリッキーな処理を目的としたソフトではない。パソコンに保存してある音楽や映像、画像のデータを一括管理し、かつ携帯電話で再生可能な形式に変換。これを携帯電話に転送する。iTunesはiPodシリーズにしかデータを転送できないが、doubleTwistはNTTドコモやKDDI、ソフトバンクモバイルの計170機種に対応するのが魅力。現在国内ユーザーが利用中の携帯電話の多くで使える。

 7月9日には、日本語対応のWindows版をリリースしたばかりである。今回、ヨハンセン氏と米ダブルツイストのモニーク・フラントスCEOが来日した。そこで、開発の狙いや日本上陸の意気込みを聞いた。

■そもそも、「DVDヨン」とも言われるハッカーが、なぜdoubleTwistを作ったのか。

フラントス氏:さまざまなモバイル機器は、便利そうに見える半面、実は使いにくい。そこで、ユーザーがモバイル機器をできるだけ簡単に使えるようにすることに情熱を燃やしたかった。iPodシリーズやゲーム機「プレイステーション・ポータブル(PSP)」など複数台のモバイル機器を買うと、機器ごとに異なる管理ソフトを使い分けなくてはならない。そこで、統一した管理ソフトが作れないかというのが出発点にある。誰もが簡単にさまざまなモバイル機器を管理できるソフトを作りたかったのが原点だ。
 日本の携帯電話機は、世界的に見ても画面サイズは大きいしマルチメディア関連で高い機能を誇る。ただ、せっかく動画や画像を見たり音楽を再生したりして楽しめる機能はあるのに、有効に活用できているユーザーは意外に少ないのではないか。その理由は、パソコンに保存されたデータを携帯電話に移行する作業が簡単ではないからだと考えた。

■doubleTwistでは、NTTドコモであれば70機種以上、KDDIで60機種以上、ソフトバンクモバイルは30機種以上と、携帯電話会社やメーカーを問わず携帯電話機に対応する。どのように実現したのか。

ヨハンセン氏:それぞれの携帯電話は、異なるプロトコルを使ってパソコンと通信するし、画面サイズやその解像度、再生可能な楽曲や動画ファイルのビットレートも違う。それらすべてを調べ、データベース化した。基本的にはすべての機種を入手して調べている。
 NTTドコモの携帯電話はある程度統一された仕様になっているし、auもほとんどが「KCP+」と呼ぶ仕様なので、対応は難しくない。ただソフトバンクモバイルだけは、各メーカーが独自のプラットフォームを採用することが多く、データベース化に時間がかかっている。対応機種が少ないのはそのためだ。

フラントス氏:1本のソフトで複数のモバイル機器に対応することが重要だと考えている。モバイル機器は頻繁に新機種が発売されるため、買い換えるたびに管理ソフトをインストールし直すのはとても面倒。まして、家族がそれぞれ違うモバイル機器を持っていると、その機種の数だけパソコンにソフトを入れなければならない。こうした不便さを解消できるのがdoubleTwistだ。これ一つあれば、家族全員が新旧問わずどんなモバイル機器を持っていても、動画や画像、音楽データを転送でき、外出先で楽しめるようになる。

■日本の携帯電話も、本当に1台1台、検証したのか。

フラントス氏:もちろんだ。検証用の環境を用意し、200台近くの携帯電話をチェックした。まだ未検証の最新機種が登場しても、ユーザーがその携帯電話機の情報をメールで送ってくれば検証する。その後、データベースへ追加した新バージョンを配布する。
 自分の機種が対応しているかどうかは、弊社のWebサイトで確認できる。

■対応することが不可能な機種は存在するのか。

フラントス氏:まさにヨハンセンは昨晩、LG電子の携帯電話機を解析するのに四苦八苦していた。動画対応について苦労していたようだ。ただ、世界的に見ればLG電子の携帯電話機は高いシェアを誇っており、できるだけ対応したい。サムスン電子の機種も同様だ。国内ユーザーが少ないため優先順位は国内メーカーより低いのは確かだが、LG電子もサムスン電子も、秋ごろには対応の計画だ。

■doubleTwistは無償ソフトで、月額使用料もかからない。今後、どうやって利益を生み出していくのか。

フラントス氏:2つのビジネスモデルを考えている。一つは無料版のソフトを配布しつつ、機能を強化した有償版を提供することで収益を得る。もう一つが、コンテンツ配信で収益を得るビジネスモデル。パートナーを集め、doubleTwistをプラットフォームとして活用してもらう。

■コンテンツ配信とは具体的にどんな内容を想定しているのか

フラントス氏:動画が中心だ。最近は、携帯電話から直接動画を入手できるが、通信インフラの制約で品質は決して高くない。せっかくの高性能な携帯電話のハードを生かせていないのが現状だ。doubleTwist経由で動画をダウンロードし、これを携帯電話機に送り込む前提なら、より高画質の動画を配信できる。コンテンツパートナーは魅力に感じてくれるだろう。

■日本では、KDDIがパソコンを活用した音楽や動画の配信サービス「LISMO」を展開している。競合しないか。

フラントス氏:KDDIのサービスはすばらしい。しかし、doubleTwistがLISMOと競合するとは考えていない。むしろ、NTTドコモやソフトバンクモバイルのユーザーを、メインターゲットにすえる。両者は、パソコン向けのマルチメディアデータ管理ソフトを積極的に提供しておらず、doubleTwistのニーズは高いと考える。

■日本市場をどう見ているか。

フラントス氏:非常にエキサイティングな市場だ。携帯電話機市場は、日本が一番成熟している。米国では車での移動が中心だが、日本では電車で移動するシーンが非常に多い。それだけ携帯電話機を外出先で使う頻度が高い。他国に比べて、iTunesを利用するユーザーが多いという情報も伝え聞く。今後は日本支社を作り、日本国内でも投資家を募るなど、日本展開を強化していきたい