「百ます計算」という算数の教材がある。10×10のます目に数字を並べ、縦横に計算を繰り返す。これを世に広めたのが陰山英男氏。陰山氏は、音読や暗唱、漢字の書き取り、計算といった基礎的な練習を反復することで、子供の学力が飛躍的に向上することを実証。「読み・書き・計算」を中心とする学習法を確立した。折しも“ゆとり教育”の反動で子供の学力低下が懸念される昨今。陰山氏の手法は一躍注目を浴び、全国に広がった。

 その学習効果をさらに高めるために、陰山氏が推し進めるのが“電脳化”だ。タブレットPCを使ったデジタル教材として、漢字練習や計算を繰り返す。

 「パソコンを使った教材は過去にもあったが、その効果は小さかった。それは自分で“手書き”できなかったため。手書き入力の可能なタブレットPCが登場し、やっと実現できた」。

 実際、タブレットPCを使うと、子供が漢字を速く正確に習得できるという。

 「一般に『間違い』と分かるまでの時間が短いほど、学習の効果は増す。パソコンは、間違いを瞬時に指摘し、正しい答えを教えられるのが利点。漢字の書き取りでは、書き順もリアルタイムにチェックできる。さらに、単純な練習を際限なく繰り返すのは、パソコンの得意技そのものだ」。

 ただ一部には、「教育を機械任せにしてよいのか」と、パソコンの活用に批判的な意見もある。これに対して陰山氏は、「そもそもパソコンですべてを完結できるはずがない。教育は人間対人間でしかできない。パソコンは単なる道具にすぎない」と反論する。

 「小学生になると、1人1台のパソコンが与えられる。そこには小学校から高校までの教科書がすべて入っていて、その子の能力に応じた教材を学習できる。教科書の改訂も、ネット経由ですぐ反映される」。そんな学習環境を実現するのが陰山氏の夢だ。

出典:日経パソコン 2009年5月11日号
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