MOOC(Massive Open Online Courses)と呼ばれる大学による講義の無償公開が、国内でも広がっている。推進団体であるJMOOC(日本オープンオンライン教育推進協議会)の公認の下、NTTドコモとNTTナレッジ・スクウェアが運営するサービス「gacco」などにおいて、多様な講義が公開されている。
 これを公共図書館において活用する取り組みを始めているのが、アカデミック・リソース・ガイドの岡本真代表取締役。教育をめぐる格差の解消につなげるのが狙いだ。活力ある高齢化社会を作るための切り札にもなるという。(記事構成は編集部)

山内:岡本さんは、公共図書館でMOOCを活用するという非常に意義深い活動をされています。大学図書館で使うというケースはこれまでありましたが、公共図書館でというのは聞いたことがありません。ニューヨーク公共図書館が同時期に同様の活動を始めましたが、これと並ぶ、世界初の取り組みではないでしょうか。

 まずは、この取り組みを始められた経緯から教えていただけますか。

岡本:私は十数年来、ネット上にある学術資料などのアカデミックリソースを紹介する「ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)」というメルマガを発行しています。前職はヤフーなのですが、その頃から取り組んでいました。これを専業にしたくて5年ほど前にヤフーを退職し、それからは会社を立ち上げて活動しています。

アカデミック・リソース・ガイドの岡本真代表取締役。ネット上にあるアカデミックリソースを紹介するメルマガを1998年に創刊。現在は、Web関連の産学官連携や、地域活性化にまつわるコンサルティングなどを広く手掛けている
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 ですから、MOOCや、その前身ともいえるOpen Course Wareにはずっと関心を抱いていました。2013年には、米国発のMOOC配信サービス「Coursera」や「edX」に東大や京大が参入して、国内でも話題になりました。この時点では、講義を全て英語で公開するということもあって、「日本では、超トップ校だけに関係する話だろう」と見ていました。

 そんな中で、2013年10月にJMOOCが誕生しました(関連記事:「JMOOC」発足、大学講義の無償配信を日本で推進)。日本という国で現実的にMOOCを推進しようという団体で、立ち上げに当たって私もお手伝いをさせていただきました。MOOCの配信サービス「gacco」を運営するNTTドコモの方々とも知り合い、gaccoを広く展開する上でのお手伝いもすることになりました(関連記事:誰でも無料で“大学生”になれる 日本版MOOC「gacco」)。

 奇遇なことに、gaccoで中心的な役割を果たしている伊能美和子さん(関連記事:“ケータイの会社”がなぜMOOC?――NTTドコモの教育事業戦略(前編))は、私が卒業した国際基督教大学(ICU)の先輩だったんです。

山内:私はお二方とも存じ上げていましたが、そこに共通点があったとは。ICUは有能な人材を輩出していますね。

東京大学大学院情報学環の山内祐平氏。2014年11月1日付けで教授に就任した
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岡本:ICUは学生数が少ないので、社会に出てから同窓生に出会うことが滅多にありませんでした。そんな中で伊能さんに出会って、元々、奇縁だなあと感じていたんですね。

 その後、gaccoの方向性についていろいろ意見交換する中で、伊能さんの発言にぐぐっと引き付けられました。伊能さんは「gaccoにはいろいろな狙いがあるけれど、私は地域間の教育格差の解消に役に立つと思う」とおっしゃったんです。

 これは私も本当にその通りだと思うのですが、ドコモの人がこんなことを言うんだ、という点にとても驚きました。ドコモのような会社なら「MOOCでグローバルを目指すんだ」とか言ってもおかしくないと思うんですが、なんと「地域間格差」に着目しているのかと。

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