教育の情報化において、デジタル教科書は重要な役割を担っている。現在は、教員が使う指導者用デジタル教科書が教育現場に普及しつつある。そして今、1人1台の学習端末の導入事例が相次ぎ、学習者用デジタル教科書にも注目が集まっている。
 黎明期からデジタル教科書の開発に取り組んできたのが、光村図書出版 専務取締役 編集本部長の黒川弘一氏。デジタル教科書の現状や課題、今後の展望について聞いた。(記事構成は編集部)

山内:昨今、デジタル教科書は何かと話題にのぼります。最近では、学習者用デジタル教科書に関する議論もよく見かけます。ただし、その実像を知らないままに抽象論だけが語られているケースが多いことに懸念を覚えています。今日は是非、黒川さんにいろいろと教えていただきたいと思います。

 光村図書出版さんといえば、国語の教科書で有名ですが、デジタル教科書にも非常に早くから取り組まれてきました。教育界の人には知られていますが、このコラムの読者にはご存じない方も多いでしょう。いつからどのような取り組みをしてきたかを、時系列で教えていただけますか。

黒川:はい、実はデジタル教科書の開発・普及には、結構長いこと取り組んでいます。そもそもは2000年から、教科書をデジタル化して資産として再活用しようというところから始まりました。

光村図書出版 専務取締役 編集本部長 黒川弘一氏。デジタル教科書の企画・開発に、長く携わってきた。教科書協会 情報化専門委員会の委員長も務める
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 ちょうどその頃、政府が「e-Japan戦略」の一環として教育の情報化政策を打ち出していました。各学校にインターネットの高速回線の接続、普通教室に2台のパソコンの整備という動きがありました。その中で、プロジェクターで教科書を拡大提示して、教科教育に役立つような授業を展開できないか、という提案がされていたんです。

 次の教科書の改訂期は2005年でしたので、とにかくそこを目指して、指導者用のデジタル教科書を出そうということになりました。既に教科書の図版やイラストなどを拡大提示するソフトは販売されていたのですが、教科書そのものを全てデジタル化するというのは初めてのことでした。

 ただ、ここでご注意いただきたいのは、デジタル教科書は、制度的には教科書ではなく、指導用の教材であったということです。ですから、あくまでも先生が拡大提示して使い、授業をサポートするものでした。

指導者用デジタル教科書の本文画面(5年「千年の釘にいどむ」)
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 発売当初は、「100本売れればいい方だ」などと言われていました。そもそも教室に、パソコンやプロジェクターなどのインフラがありませんでしたからね。でも、非常に市場からの反応があって、2~3年で1万本を超える実績を記録しました。もちろん、賛否両論はありましたが、これまでの指導法を大きく変えるわけではありませんので、比較的すんなりと受け入れられていったように思います。

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