「パソコンではあまり目が疲れないのに、スマホだと疲れます」と患者さんに言われることがあります。その方が待合室でスマホを使っている状態を見ると、「そりゃー疲れるわ」と思います。「考える人」の銅像のように肘を膝についているのですが、その手にスマホを持っているからです。

 パソコンによる目の疲れの原因は何度も挙げていますが、

  • ブルーライト
  • 画面にずっとピントを合わせること
  • ドライアイ
  • 姿勢

 です。この中でスマホを使う際にパソコンと1番異なる点は、「姿勢」ではないでしょうか。スマホを使っている人を見ていると、非常に姿勢が悪い、そして画面と目の距離が近すぎます。姿勢の問題は専門外なので、距離の話に限って今回は書きますが、みなさんはスマホを見ているとき何cmくらい離していますか?

 「考える人」状態だと画面と目の距離は20cmもないと思います。写真は当院のスタッフに「いつものようにスマホを見て」と言ったときと、50cm離して見てもらったものです。いつも通りの状態でも、彼女は結構姿勢よく使っていますし、目との距離は40cmくらい離して使っていました。

いつも通りの状態
[画像のクリックで拡大表示]
50cm離した状態
[画像のクリックで拡大表示]

 スマホユーザーを調べた論文によると、スマホの画面と目の距離は、メール利用時で36.2cm、ネット利用時には32.2cm、という平均値が出ています(参考文献:Optometry & Vision Science, p795-797, 2011)。印刷したものを見る距離は40cmとされていますので、それよりも近いことになります。中には18cmくらいで見ている人もいたそうです。この論文は米国での調査のため、英文アルファベットと日本語では厳密に言えば違いがありますが、恐らく日本で調査しても同じような結果になるのではないでしょうか。

 画面が近いと目が疲れてしまうのは、これまでの記事を読んだ方なら気付かれると思いますが、ピントを合わせる筋肉がより強く緊張してしまうからです。目は遠くを見ているときが1番リラックスした状態です。近くを見るときにはピントを合わせる筋肉を緊張させ、より近くのものを見るときには緊張度合が強くなるのです。そして老眼年齢になると、このピントを合わせるのがうまくできなくなります。スマホが見えにくい、離せばピントは合うが読めない、と苦労しているのであれば、画面を拡大する、老眼鏡をかける、という工夫が必要です。

 私は混んだ電車の中で、前の人のスマホが視野に入ると、「うっ」というような気持ち悪さに襲われます。使っている人よりも画面から目が離れているわけですが、老眼の私には近すぎるのですね。前の方、若いなあ~と思って目をそらせますが……。

 日本眼科医会が「子どものIT眼症」という内容でまとめたものによると、「IT機器を使うなら、(1) 50cmで楽に見える状態のものを使う、(2) 連続使用は50分以内にする、(3) 目との距離を必ず50cm以上離して見る習慣を付ける、とあります。

 このまとめは、スマホに限っているものではありませんので、手に持つスマホを50cmも離すのは無理、と言われるかもしれませんが、パソコンだから50cm、スマホなら30cmでよい、ということにはならないでしょう。「画面を見る」ということでは同じ器機だからです。50cmという距離がスマホを使うのに不自由であるのなら、スマホはやはり携帯する「仮のツール」であって、長時間使うならパソコンの方が良いと思います。

 私は徒歩通勤のためスマホを持つ必要がないと思い、いまだにガラケーですが、新しいツールが出たときは患者さんの役に立つこともあるので、情報収集は欠かせませんね。