「IT眼症」とは、IT機器を長時間あるいは不適切に使用することで生じる目の病気と、その状態が引き金となって発症する全身症状のことです。「VDT(Visual Display Terminal)症候群」「テクノストレス眼症」とも呼ばれます。VDTとはパソコンやテレビなどのディスプレイを指します。ちなみに、私は眼科医として、ディスプレイなどを使って作業する人の健康状態を検診する「VDT(Visual Display Terminal)健診」を行うことがあるので、VDT症候群という呼び方がなじみます。

 IT眼症には、目の疲れ、充血、ドライアイ、頭痛、首・肩・腕・手・腰の痛みや疲れなどの症状、そして不安感やイライラなどの精神症状も含まれます。

 眼科を受診する人の訴えとしては、目が乾く、疲れる、充血する、痛い、ゴロゴロする、しょぼしょぼする、重たい、違和感がある、かすんで見える、光をまぶしく感じる、目やにが出る、頭が重い、頭痛がする、吐き気がするなどです。これらは、いわゆる「眼精疲労」と「ドライアイ」の症状です。どなたでも一度は経験したことがあるのではないでしょうか?

 何が原因で「IT眼症」が発病するのでしょうか。前回の記事を読まれた方ならもうお分かりだと思います。パソコンによる目の疲れの主な原因は、「ブルーライト」「画面にずっとピントを合わせ続けることによる疲れ」、そして「ドライアイ」です。加えてパソコンを使っているときは長時間同じ姿勢をとり続ける、ということもIT眼症の原因になっています。

検診項目に含まれないドライアイ

 VDT健診は法律で定められているものではありません。企業主催で行われるため、実際には健診を受けていないパソコンユーザーも多いでしょう。しかも、残念ながらVDT健診の項目にドライアイの検査は入っていません。VDT健診を受けていても、ドライアイに関してはまったくノータッチなわけです。これは、ドライアイというものが、ブルーライトと同様に、比較的新しい考え方だからかもしれません。

 しかし、実際に調査をしてみると、パソコンユーザーにはドライアイが多いのです。22歳以上のVDT作業従事者を調べたある調査では、ドライアイと診断されたことがある人が男性で10.1%、女性で21.5%。重度のドライアイ自覚症状があると回答した人が、男性で26.9%、女性で48.0%でした(出典:Ophthalmology 115: 1982-1988, 2008.)。一方、VDT作業従事者が少ない長野県の山岳地域にある小海市で行った同様のアンケート調査(出典:Ophthalmology 118: 2361-2367, 2011.)では、ドライアイと診断されたことがある人が男性で2.0% 女性で7.9%、重度のドライアイ自覚症状があると回答した人が男性で11.5%、女性で18.7%と、先に挙げた調査より割合が少ないのです。

 この2つの調査は、一般の人へのアンケートのみで、眼科医による診察結果を踏まえたものではありません。ただ、眼科医の診察結果が出ている調査でも、同様の傾向が出ています。ドライアイ専門眼科医による診察データが出ている、ある企業で行った「Osaka Study」と呼ばれる調査結果では、ドライアイだと診断された人が11.6%、その疑いがある人まで含めると65.6%。パソコンユーザーにドライアイが非常に多いという結果でした。VDT作業が長いとドライアイになりやすい、という傾向もあると報告されています。こうしたことから、VDT作業がドライアイを起こす原因であると言えます。

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