電子書籍の価格操作をしたとの疑いで、アップルを訴えていた米司法省とアップルの対決が始まった(関連記事)。忘れかけていたが、アップルは他の出版社が和解に応じた後も断固として疑いをはねのけ、「悪いことはしていない」と主張し続けていたのだ。

 この訴訟は、2012年春に司法省がアップルと大手出版社5社を相手取って起こしたもの。電子書籍の価格設定に際して、この6社が共謀して価格をつり上げ、消費者に多大な被害を与えたというもの。いわゆる談合を行ったという、独占禁止法違反の疑いだ。

ベストセラー・新刊書も安価で提供していたアマゾン

 ことの発端は、今からさかのぼること3年半前、初代iPadの発売を予定していたアップルが、アマゾン(Amazon.com)を出し抜くために行ったとされている。そのさらに3年以上前からキンドル(Kindle)と電子書籍を発売していたアマゾンは、電子書籍市場ではほぼ9割にも届こうかというシェアを占めていた。

 アマゾンは、キンドルを広めるために、コンテンツを安く提供するという戦略を展開。ベストセラー本や新刊書も含めてほとんどの電子書籍を9.99ドルという格安価格で売っていた。今でも思い出すが、消費者の我々にはものすごく嬉しかったものだ。何と言っても、9.99ドルという価格は、通常の新刊書ならば定価の3分の1に近い価格だ。アメリカの電子書籍が盛り上がったのは、この価格設定によるところがかなり大きいと思う。

価格決定権を握りたかった出版社

 ところが出版社は、一方で紙の本を売ろうとしているのに、他方でアマゾンが超特価の電子書籍を売りまくっているのを、必ずしも喜んでいなかったのである。後発のアップルが、9.99ドルではなく、「12.99ドルとか14.99ドルという価格にしましょう」と言ってきた(とされる)時には、喜んで飛びついたのだ。アップルとしては、より高い価格を提示することで、紙と電子の狭間で苦悩する出版社を魅了しようとし、出版社はアップルとの関係を楯にして、アマゾンに圧力をかけたのである。

 出版界の専門用語では、アマゾンがやってきた売り方は「卸売(ホールセール)モデル」、アップルが提示したのは「代理店(エージェンシー)モデル」と呼ばれている。前者では、小売店が自由に価格を決定することができるのだが、これは従来も米国の出版界が行ってきた通常のやり方だ。それに対して後者は、日本の方法に似ているが、出版社が小売価格を決定するというもの。アップルは後発で電子書籍市場に参入するに当たって、新しい方法を持ち出したというわけだ。

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