「板長」こと、八戸ニューシティホテル常務取締役の谷口圭介氏は、ブログを通じて全国の百貨店バイヤーから引っ張りだこになったブログの達人だ。口の中でとろけるような「虎鯖の棒すし」を、1本3000円近い高値で販売している。無名に近かった谷口板長の虎鯖は、今や百貨店の催事やネット通販で大人気である。

 筆者は数年前、インターネット活用の講師として八戸を訪ねた時、鯖の商品開発に燃える谷口板長に出会った。その際「だまされたと思って、3年間、鯖のことだけブログに毎日書き続けたら成功する」と助言した。

 言うのは簡単だが、1つのテーマを3年も書き続けるのは容易ではない。しかし、谷口板長は地道にブログを続けて全国区になった。

 今回は、谷口板長の取り組みを参考に、ブログでビジネスを成功させる秘訣を紹介しよう。

1.初めに得意ジャンルと試作品あり

 谷口板長は、講演会場にシメ鯖と味噌煮の試作品を持ち込んで、講師の私に食べるように勧めてくれた。まだ試作品だというが、そのおいしさに私は驚いた。これが快進撃の始まりだった。得意ジャンルが何もなければ、また話のきっかけとなる試作品がなければ、人の心は打たないし、3年もブログは続かない。まずは自社の強みを最大限に生かす試作品を作ろう。

2.テーマを徹底的に絞り込む

 新商品や新ブログを作るとき、ついつい保険をかけてテーマを広げて曖昧にしがちである。それでは、特徴もなければ、検索エンジンでも上位に出ない。

 だから筆者は、谷口板長に、八戸のおいしい魚貝類の中でも「鯖」に絞り込んで、徹底的にブログを書くように勧めた。鯖のことだけを毎日考え、おいしい鯖の情報だけを発信する。そうすれば、鯖×ブログの「オンリー1」になれるからだ。

3.その道で一番熱い人になる

 顔が見える店主、さらに言えば「その道の信頼できるプロ」から買いたいと思うのが、ネット生活者の特徴だ。谷口板長は、とにかく鯖の話をし始めたら止まらない情熱的な人だ。本物の鯖を食べたことのない人に「伝道者」のように熱く語る。それを3年続ける覚悟があれば成功するはずだ。

4.究極の商品作りを目指す実話

 誰よりも○○を愛するプロが、どうしても作りたかった究極の商品を、生活者も百貨店バイヤーも熱望している。谷口板長の場合は、究極の鯖の棒すし作りに挑戦し、漁船に乗ってまで最良の鯖を探し求めた。そして大トロのように脂が乗った鯖と出会い、「虎鯖」と命名。究極の棒すしが完成した。その試行錯誤の物語を、読者は同時体験して感動したのだ。

5.プロの目に留まるのを3年待つ

 3年もブログを続ければ、少しずつ谷口板長のファンも増えてくる。その中には、百貨店の商品仕入担当もいて、ブログに目を光らせていた。まさに3年後、板長の虎鯖ブログは、当時の東武百貨店船橋店長(現・常務取締役本店長)の佐藤治夫氏の眼に留まった。全国うまいもの市に招かれ、いきなり記録的な売り上げを達成した。

6.リアルな実演イベントで熱い交流

 佐藤氏は、イベント会場で驚くべき光景を目にした。谷口板長のブースに人が集まり、いきなり自己紹介を始めていたのだ。鯖ブログを愛読しネットで交流してきた読者がお客様として来店、「よく来てくれた」と歓迎したのである。ブログで仲良くなったお客様がリアルな実演イベントにも来場。さらに仲良くなる相乗効果が生まれた。

7.イベント成功をブログでアピール

 イベントの成功を虎鯖ブログで発信すると、ほかの百貨店のバイヤーも動き始めた。続々とイベント参加の依頼が舞い込み、今や板長は1年の半分以上、虎鯖の実演販売で全国行脚だ。もちろん、全国各地でブログを愛読していた板長ファンが待ち構えている。

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 最近の板長ブログは、虎鯖のみならず、全国の銘品・名店仲間の紹介が多い。相互PRでさらに顧客拡大中だ。

出典:日経パソコン 2013年4月8日号
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