iPhone 5やiOS 6で、Googleマップに代わってアップル製のマップが搭載され、世界中で問題が噴出。音声ガイドのプログラム譲渡など、2社は標準搭載の条件で折り合わず、その結果、たとえ生煮えでも、アップルは強敵グーグルを追い出して自家製に置き換えたという。その生煮えの地図のせいで、世界中で迷子になっている人が、さぞかしたくさん出ていることだろう。

 あんなに重要なGoogleマップが追放された一方で、「どうしてこのアプリはまだ許されているのだろうか」と不思議に感じるのは、アマゾンのKindleアプリである。Kindle用の電子書籍をKindleではなくiPhone/iPad/iPod touch、さらにはAndroid、パソコンからでも読めるようにするアプリだ。

iPadでもKindle書籍を読める「Kindle for iPad」のダウンロード画面
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 グーグルがアップルの強敵ならば、アマゾンも同じようにアップルの強敵である。MP3ミュージック、音楽、映画、タブレットとアップルが行くところ、アマゾンも行く。いや、その逆の場合もあって、電子書籍はアマゾンが先陣となってアップルが追った例だ。いずれにしても競合。だが、Kindleアプリは何のお咎めもないままである。

 いずれにしても、デジタルコンテンツを楽しむサービスとデバイスの面では2社は正面衝突しているのに、Kindleアプリを追い出さない背景にはどんな計算が働いているのだろうと考えてしまうのだ。

 ひとつには、やはりiPhoneやiPadなどのモバイル上でGoogleマップが利用される度合いが、Kindleアプリなどとは比べものにならないほど大きかったのだろう。iPhoneやiPod、iPadでKindleアプリを利用して本を読んでいる人もかなりの数に上るが、それとは段違いでマップが利用されていたのだと思う。

 その莫大な数の利用者をみすみす強敵に横取りされる必要はない。ユーザーのデータもたんまり貯まる。ただ、「マップと言えばグーグル」と言うほど、多くの人にとってはなじみのあるものだったから、アップルとしては一種の賭けではあったと思う。果たしてどれだけのユーザーが、Googleマップがないということを理由に、iPhoneを使わなくなるか。

 しかし、発売後最初の3日間で500万台を売り上げたというのだから、それは杞憂に終わったというべきか。アップルが言うように、本当にこれから地図を改良していけばユーザーは納得するのかもしれないし、生煮えでも慣れてしまうのかもしれない。それに、1アプリよりも、やっぱりiPhoneのハードウエアとしての魅力が大きかったということだろう。

 マップが奥深いツールであることも、GoogleマップとKindleアプリの大きな違いだ。マップは単なるツールである以上に、ローカル情報やローカル広告が縦横に錯綜する“金のなる木”だ。音声ガイドなど、かなり高度なテクノロジーも付随している。一方、Kindleアプリは本を買って本を読むくらいのことしかできない。

 それでも、少なくとも今は、Kindleアプリに代わるアップルの自家製がまったくお粗末な次第だ。つまりアップルの電子書籍はとても売れていないのだ。だから、たくさんのユーザーが既に使っているKindleアプリはそのままにして、まるでデフォルトの電子書籍ツールのように使ってもらった方が得策、であることは確かなのだ。

 だが、Googleマップが追放された今、こういう関係はいつまで続くのだろうかと思う。ずっと続くという保証はないのだ。特にアマゾンは現在、デジタルコンテンツを電子書籍以外の映画や音楽などを猛スピードで充実させていて、まぎれもなくアップルと正面衝突しそうな気配。アップルが急にアマゾンを蹴り出したくなるときがやってくるのではないか。きっとアマゾンも息をひそめて様子を伺っているのに違いない。