みんな、ひそかに、そう感じているのではないだろうか。iPhone 4Sのデビューと同時に公開されたiCloudは、期待したものとはちょっと違っていた。クラウドにこだわったために電源をあっという間に消費してしまうiOS 5も、驚くような新鮮さが感じられなかった。

 結局、軽快だった旧iPadは前のままで良かった。でも、約4時間もかけてアップグレードしたiPadを工場出荷時の状態に戻して、また、最初からやり直しというのもかなりつらい。iOSの更新と引き換えに、やっぱり使ってみたいから早々にiCloudの新2000万会員の1人になったのだが、今のところほとんどの機能はoffになっている。

 ここ数年は、あまり感じることのなかった久しぶりの「しまった!」感なのである。

 まるでラブレターのようなアップルの甘い誘い文句に20年以上も魅了され、期待にそぐわない製品にもずいぶんと泣かされてきた。けれど、やっぱり爆発するほどに魅力的な製品に逢いたくて、どれだけのお金と時間をリンゴに費してきたことか……。

 賞賛ばかりの最近のアップルではあるし、スティーブの追悼ムードの中なので、ちょっと出しゃばりが過ぎるかもしれないけれど、長年の1ユーザーとしてiOS 5とiCloudで抱えた疑問を記しておきたい。

 そもそも、iOS 5はアップルが言うように「iOSをまったく新しいレベルへ。」だったのだろうか。「iOS 5では、200を超える新機能を追加」したそうなのだが、多機能で勝負するのはアップルの姿ではないだろう。

 スティーブが「こんなものはダメだッ!」と蹴っ飛ばしてきたものが、それまで我慢していたスタッフの情熱に押されてドバッと出てきてしまったのではないか。でも、もしそうだとすれば、これはスティーブ後のアップルの最初の危機と言えるだろう。たった1つでもよいから、「コレは!」というようなものをユーザーに届けてこそ、アップルの「新しいレベル」である。

 今回の200を超える新機能のうちでアップルが薦める「私たちのお気に入り」なる機能は9つある。そのいくつかを見てみよう。

 まずは「通知センター」がお気に入りのトップである。「便利」さを売り物にする機能であるが、こうした機能はAndroidではおなじみのもの。iPhoneユーザーのニーズへの対応ならば、そっと機能を加えておけばよい。これがお気に入りのトップにあることは、人間の感性に訴えるITファッションリーダーのアップルとして良いことではない。

 「iMessage」は、テキストメッセージが主流の欧米のSMSを進化させてSNS化するつもりなのだろう。「Viber」のテキストチャットに似ているような似てないようなそれは、テキストだけでなく、写真、ビデオ、位置情報も送れるというのだが、そもそもSMSは手軽さ、シンプルさが売りのツールである。それなのに写真やビデオを付けようとするアプリのデザインは必要なのだろうか。ましてや独占欲の強い恋人ならいざ知らず、SNSならテキストで「~なう」と入力すれば信頼できる友人たちに居場所を伝えるには十分である。なぜ位置情報まで使わなければならないのか。Carrier IQが騒ぎになっているが、デザイン重視の会社はユーザー情報に依存し過ぎてはいけない。製品が一般化してつまらなくなってしまう。

 「Newsstand」も不思議ではないか。なぜiBooksに統合されないのか。Newsstandの本棚アイコンはiBooksのそれを連想させる。これまでの認知心理を心がけるデザインはどこへいったのか。電子書籍化した雑誌は動く仕掛けが満載で面白いけれど、広告も満載で、そのうえ1冊ダウンロードするのに数百MBにもなる。Wi-Fiならまだしも、携帯回線でダウンロードするとなれば気が遠くなる。Flashを批判した後のiCloudなのにこれで良いとは思えない。

 そしてTwitterを統合したことまでが「お気に入り」なのである。過去のアップルなら、ユーザーのために機能としては統合しても、ひっそりとTwitterを超えるものを創り出す努力をしたことだろう。

この先は会員の登録が必要です。今なら有料会員(月額プラン)が12月末まで無料!

日経 xTECHには有料記事(有料会員向けまたは定期購読者向け)、無料記事(登録会員向け)、フリー記事(誰でも閲覧可能)があります。有料記事でも、登録会員向け配信期間は登録会員への登録が必要な場合があります。有料会員と登録会員に関するFAQはこちら