■電子書籍についての15の考察~次世代にいかに情報を引き継ぐべきか
筆者:松浦晋也
販売:日経BP社
価格:350円(無料で一部記事が読めるLite版もあり)

 今回は電子書籍に関する電子書籍である。電子書籍の中から電子書籍を語る。さぞかしやりにくかったに違いない。

 本論に入る前に、筆者の電子書籍に対する雑感を述べておく。筆者は出版業界で生活している人間であり、かつ、個人的にも興味があって、2010年はずっと電子書籍の動向を見ていた。その結果、すごく疲れた。

 大ざっぱな印象をいうと、出版社は不機嫌である。まだ電子書籍を読むためのデバイスの普及が足りない。パイのないところに商品を投げ込むのは消耗戦である。同じコンテンツを紙と電子の両方に仕立て上げるのには手間がかかるが、手間に応じた収益が上がるわけではなく、忙しさばかりが増していく。

 著作者もまた不機嫌である。本を書いても書いても絶版か返品だ。紙の雑誌はどんどん潰れ、Webの原稿料は安い。電子書籍に一縷(いちる)の夢をつなぐものの、出版社はAmazonにもGoogle BooksにもAppleのiBookstoreにもコンテンツを提供しない。AmazonもGoogleもAppleも、当然、不機嫌だろう。日本は電子書籍を携帯市場だけでやっていくつもりなのか? 存在を否定されかけている印刷所、取次、書店が上機嫌のわけはない。

 一番、腹を立てているのは読者だ。せっかくiPhoneなりiPadなりKindleなりを買って待っているというのに、いつになったら日本の出版社は電子書籍を出すつもりなのか?幸せな人は誰もいない。1年前には、まさかこんな悲惨な状況になるとは夢にも思わなかった。だが、これは一面的な見方。従来の紙の書籍を電子書籍に置き換えるというごく限られた局面の状況である。

 筆者がこの連載で楽しげにiPadライフを満喫しているように、あきらかに面白いコンテンツは増え続け、流通は多様化し、さまざまな場所で新しい動きが胎動している。出版社を頂点とするピラミッド内は不機嫌だが、それ以外の場所ではみんなが生き生きとして実験を続けている。

 「電子書籍に関する15の考察」は、出版界という狭い世界を相手にした本ではない。電子書籍という存在をもっと広く、大きなものとして捉えており、読後感は爽快だ。「電子書籍なんて……」と暗い顔で呟いている人に読んでほしい。価格は350円と破格の安さだが、さらに無料のLite版が用意されている。Lite版では「はじめに」「第1章」「第2章」を読むことができる。立ち読みの分量としては十分だろう。

「電子書籍についての15の考察~次世代にいかに情報を引き継ぐべきか」。PC Onlineの連載を、紙を経ずに直接、電子書籍化した。
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