「ガラパゴス化」…。最近よく聞く言葉です。

 これは、南米ガラパゴス諸島に見られる特殊な生物進化のように、技術やサービス、制度などが日本で独自の進化を遂げ、その結果世界の標準からはかけ離れてしまい、世界市場から取り残される状況を表した例えです。

 なかなかうまい表現ですね。日本の携帯電話やデジタルテレビ放送、カーナビなどの技術・システム・サービス形態などが当てはまるとされています。

 ガラパゴス諸島は、南米大陸から西へ約900km沖の太平洋上、赤道直下にあります。エクアドル領で、大小120以上もの島々からなり、チャールズ・ダーウィンが有名な「進化論」の着想を得た島として有名です。

 そもそもこの島で独自の生物進化が確立されたのは、太平洋によって大陸からはるか遠方に隔離され、独自の環境が長く続いたからです。その長さは、生物の進化に影響を与える数千万~数億年というオーダーでなければなりません。またそれだけではなく、その間生物種が繁殖を重ねて、子孫を継承できるだけの、食料供給面を中心とした生態系が維持されることも必須条件です。

 これを携帯電話の例に当てはめてみれば、IT技術の進化に必要な時間のオーダーは、まあ数年から10年というところでしょう。そしてなによりも、日本には、「携帯電話なしではいられない」という国民性、つまり“新機種の繁殖を継承しうる安定市場”という「環境」が整っていたことも忘れてはなりません。

 生物の世界で、「ガラパゴス化」がさらに進む、つまり限られた生態系内での進化がどんどん進んでいくととどうなるのでしょうか?

 ある学説によると、このような場合「特殊な環境への適応」がとことん進んで、生物種が究極まで細分化された後「進化の袋小路」という状況に入り込み、合理的には説明の付かない形態の変化を遂げ、やがてその種は滅んで行くケースがあるといいます。

 たとえばアンモナイトは、絶滅近い時期には、よく知られた規則的な渦巻き型だけではなく、渦巻きが緩んで管の間に隙間ができたものや、目茶苦茶に丸めたような不規則な巻き方のものが現れています。これらは「生物種としてのピークを過ぎて活動領域が狭まり、生物種間で近親交配が繰り返されたことによる異形化ではないか」という説もあります。

 それではガラパゴス化した携帯電話の行く末は?

 人間の作り出した道具は生物とは違います。生物のように、「進化の袋小路」に追い込まれたとしても「合理的には説明の付かないような形態の変化」などは起こらないかもしれません。ただ、なんとなくそれに近いことを感じたことはないでしょうか?

 実は3週間ほど前、それまで使っていた携帯電話が故障をしたのを機に、新しい機種を購入しました。量販店で選ぼうとして、まずその選択肢の多さにびっくり(正直うんざり)。結局、私はiPadを所有していることもあって、スマートフォンではなく、写真撮影やビデオ録画の機能に優れたものを選んだのですが、その取扱説明書を見て、あまりの多機能ぶりにまたびっくり。「すさまじきバリエーション!」「ここまで多様な機能を求める人、使いこなせる人が本当にいるのだろうか…」「携帯電話技術の進化はこれから、どこへ向かって、そしてどこまで、突き進むのだろうか…」と強く感じたものです。

 爛熟期の日本の「携帯電話」に対し、「進化の袋小路」に入り込んだ生物種同様、「コントロールを超越した“暴走”」のイメージを抱いてしまうのは、私だけなのでしょうか?