先日、NTTワールドエンジニアリングマリン(NTT-WE マリン)の海底ケーブル敷設船「すばる」を見学してきました。

 みなさん、海底ケーブルってご存じですか。私たちは日々、電話やインターネットを利用しています。これらは、海底深くに敷設されている通信ケーブルが、島と島、国と国を物理的につないでいるおかげで実現しています。この通信ケーブルが海底ケーブル。そしてその海底ケーブルを敷設するのが海底ケーブル敷設船です。

 ケーブル敷設船は数が少ない上、洋上作業で忙しいので見学の機会は限られています。が、実は私、見学するのは2回目。前回は2年ほど前で、KDDIの子会社の国際ケーブル・シップ(KCS)が保有する「KDDオーシャンリンク」を見学しました。おそらくNTT系、KDDI系の両方のケーブル敷設船に乗ったことのある記者は少ないと思います(ちょっとした自慢)。そこで、今回は2回に渡る取材の裏話。それぞれの見学の様子は、末尾のリンクの記事をご覧いただくとして、記事には書けなかったエピソードをご紹介しましょう。

設備より文化が違うぞ、敷設船

 実際に2つの記事を見比べていただくと分かると思いますが、はっきり言って、2隻の設備はほとんど変わりません。いずれも活躍中の海底ケーブル敷設船。最先端の機器を搭載していますし、そもそもこのような機器を作るメーカーは限られています。ですから、水中ロボにしろ、埋設機にしろ、同じようなものを採用しているわけです。実際、海外の敷設事業の請け負いで2社が競うことになった場合も、船の設備よりも、掛かるコストや工事期間中に船を確保できるかの方が重要だといいます。

 では、2隻に違いはなかったか。大きな違いがありました。それは船内の“文化”と言えばいいでしょうか。誤解を恐れずに言えば、KCSは海の男の文化、NTT-WE マリンは技術者の文化という印象を受けました。

 例えば、船内の食堂。2年前当時の話ですが、KCSは船長や航海士などの上級乗務員と一般乗務員は別々の食堂を使っていました。上級乗務員の食堂はきれいで、壁には絵が掛かり、食事は配膳係のサーブ付き。一般乗務員の食堂は清潔ではあるものの、設備は簡素で、セルフサービスです。座席もきっちり決まっていました。いざというときも上から下へ滞りなく指令が流れるよう、日常から上下関係を徹底しているそうです。船内ですれ違っても、船員は船長に歩みを緩めて頭を下げる、そんな感じです。

 これに対して、NTT-WE マリンは食堂は一つ。案内してくれた三等航海士に聞くと、「かつては食堂を分けていたけれど、今はみんなで食事をとります」ということ。船員同士の会話もオフィスのような和気あいあいとしたものでした。

 休暇の取り方も違います。KCSでは、KDDオーシャンリンクを含む2隻の海底ケーブル敷設船を3人の船長で担当。8カ月は無休で勤務、それが終わると4カ月は休みというローテーションにしていました。これに対して、NTT-WE マリンは、原則的に週休2日制。航海中や洋上作業中の土日、祝日は、帰港後、代休として扱われます。

 実は、KCSはKDDIの子会社ですが、船の運営や管理は商船三井グループのエム・オー・ケーブルシップという会社に委託しています。つまり、一部の技術者を除き、乗務員は商船三井系の人。一方、NTT-WE マリンは全員が同社の社員です。出自が海運会社か、通信会社か。前述のような文化の違いは会社の成り立ちの違いでしょう。

 ただし、共通していたのは、自分の仕事に高い誇りを持っていることです。現代社会においては、仕事にしろ、家庭にしろ通信は欠かせないインフラ。その土台を支えているという自負と責任感がどちらにもあふれていたように思います。