旧暦の正月を終えた中国だが、“世界の工場”としての中国が従来通り機能するか、この旧正月明けにかかっていると見る関係者は多い。

 昨年末、金融不安から端を発した世界的な不況は、確実に中国にも影響を及ぼしている。多くの工場が大規模リストラや撤退を余儀なくされた。今年の旧正月も、生産調整のため、通常より長い3週間から1カ月の休みを取った工場もあるほどだ。

 そして、中華圏で新年度がスタートする旧正月明けこそ、第2段階のリストラや工場閉鎖があると見られている。また、昨年は工場を臨時休業したままにするケースも出てきており、工員の中には「故郷から戻ってきたときに、仕事があるとは限らない」と、現地に残る人までいたほどだ。

 一方、工場経営者にとっても悩みの種は尽きない。景気後退にともない、商品の値下げ圧力はいっそう強くなり、製造ラインの縮小や時間外労働時間の短縮など、製造コストの削減に迫られている。しかしながら、製造コストを下げることで、品質まで低下してしまえば、競争力を失うことになる。事実、昨年末に生産された製品に関して、品質の低下を実感しているメーカーも存在する。

納入された資材すべての品質を、製造ラインに入れる前に事前チェックする工場ある。部材の品質が製品のクオリティに大きく影響することを理解しているからだ

 もう一つ、深刻な問題となりそうなのが、部材調達チェーンの確保だ。パソコンに限らず、電化製品は、CPUやメモリーなどのICチップ製品だけでなく、基板やコンデンサー、各種コネクター、ケーブル類など、さまざまな部材を必要とする。中国が世界の工場として著しい成長を遂げたのは、これらの関連産業が大手工場を取り巻くように形成され、部材調達のしやすさから、大手工場の周辺に中小の工場が進出して、工業地帯の拡大を続けてきた。

 このため、各工場では独自の部材調達関係を築き上げ、新製品開発や品質向上にも連係を取ってきた。しかし、この世界的な不況下で、これらの部材調達チェーンの一角が崩れると、製造コストや品質面で大きな影響が生じる可能性が出てくる。そのため、部材メーカーの資材調達関連も含め、旧正月明けに従来通りの製造が続けられるか、慎重に調査を続けている中小の工場経営者も少なくない。また、一部の工場では、旧正月明けの生産スケジュールをやや緩やかにし、品質検査に重きを置こうと考えているところもある。

 ある工場関係者は、「現在、さらなる低価格化を迫られている。しかし、品質を落として不良率が上がれば、市場での信用を失うだけでなく、保証や修理にかかるコストだけで、儲けは失われてしまう」と、製品の低価格が引き起こすネガティブスパイラルを未然に防ぐ必要があると考えてもいる。

 事実、5年保証、永久保証をうたっていた一部のベンダーも、製品の低価格化とそれにともなう利益率の低下を理由に、保証期間を短縮する動きを見せている。現在の中国は、リストラや経営合理化による製造コストの低減だけでなく、品質の管理も「生き残りのための必須条件」(同関係者)となっているのだ。

製造ラインには、いくつもの品質チェックポイントが用意されている。この品質チェックがうまく機能しているか否かで、製品のクオリティが大きく左右される

 とはいえ、ある工場経営者は「深刻な問題が生じるのは、部材の在庫が入れ替わる3月から4月にかけてだろう」と分析する。つまり、昨年の在庫がある状況では、不況の影響による部材品質の影響を正しく見ることはできないというわけだ。それまでの2カ月間に、新しい部材調達チェーンの確立と、部材変更にともなう製品改良をいかにこなせるかが、不況下で生き残るために欠かせない要素だと見ている。

 こうした状況を受けて、製品の製造を委託しているベンダーの一部は、現地で品質管理を行うエージェントの確保や、現地に出向いて品質チェックを行う頻度を高めるなどして、この状況に対処しようとしている。現在、ベトナムやタイ、マレーシアなどの東南アジア諸国への移転を検討する工場経営者も多いが、彼らが口をそろえるのが部材調達の難しさだ。その意味では、今回の世界的な経済不況は、IT関連企業にとっても生産構造全体を見直す契機となりそうだ。