日ごろ、ゲームと漫画に明け暮れている我が家の中2の息子。
 突然「小説が読みたい」と言い出した。
 おお、なんといううれしい発言。親としてはこのチャンスを逃すわけにはいかぬ。
 とはいえ、オトナとコドモの間の難しい年ごろだ。どんな本を薦めればいいのやら皆目見当がつかない。
 私が中学生のころは何を読んでたっけ?
 北杜夫のマンボウシリーズとか遠藤周作の狐狸庵シリーズとか…。ああ、そうそう、星新一のショートショートも好きだった覚えがあるなあ。

 さらに息子が言うことには「悲しい小説が読みたいんだよ」。
 えー、悲しい小説?
 なんだそれは。

 正月ボケがいまだ抜けぬボンヤリした脳味噌を無理矢理フル回転させ、ようやく思いついたのが、堀辰雄の「風立ちぬ」。
 「それ、どんな話?」
 ええとねえ、確か、結核なんだよ、そう、結核でね、誰か死んじゃうんじゃないかなあ。
 「それで?」
 いや、読んだことないから分かんないんだ。すまんね、無責任な母で。
 そうだ、今どきの若い人に人気のある「セカチュー」とか「コイゾラ」とか、あのあたりの小説はどうかな。たぶん誰か死んじゃう話だよ、きっと。読んだことないから分かんないけど。

 「……もういいよ。別にそれほど読みたいわけじゃないから」

 いやいや、待て待て。せっかくの読書欲、無駄にしてはいかん。
 あわてて見繕ったのが、高野秀行の「ワセダ三畳青春記」
 小説じゃなくてエッセイだけど、ユーモアのあるテンポの良い読みやすい文章でこれなら中2男子でも楽しく読めるような気がする。

 幸いなことに息子は「ワセダ三畳青春記」を気に入ってくれたようで、同じ作者の「異国トーキョー漂流記」も貸して欲しいと言う。よかったよかった。
 「数学や英語は苦手だったが、現代国語だけは大の得意」と普段から吹聴している母の面目が立ったというものである。

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