2008年は、メモリー業界にとって試練の年となった。特にパソコン用主記憶メモリーとして需要が高いDDR2 SDRAMの急激な低価格化は、メモリーチップベンダーやメモリーモジュールベンダーに深刻な打撃を与えた。

 DDR2-533などメインストリームといわれる普及製品の市場価格は、原価割れギリギリまたは赤字生産とも言われ、既にメモリー事業から撤退したベンダーも少なくない。半面、消費者の立場からみれば、より大容量のメモリーを廉価に入手できるチャンスでもあり、現在利用中のシステム強化を図るうえでも絶好のチャンスと言える。

 ところが、この状況に警鐘を鳴らす声も少なくない。大手メモリーベンダー関係者は「過去のメモリー価格崩壊時は品質で劣る製品も多く市場に流通する結果を招いた」と、激しさを増す価格競争がメモリーモジュールの品質にも影響を与えた過去を忘れるべきではないと指摘する。このため、これからメモリー製品を購入するのであれば、「信頼できるブランドや、保証がしっかりしたベンダーの製品を選ぶべきだ」と言う。しかし、こうした状況に独自手法で対応するベンダーも現われている。

負荷試験をメインストリームの生産工程にも導入

 “GeIL”ブランドで知られる台湾Golden emperor Internationalは、サーバー用製品などで用いられる負荷試験をメインストリーム製品の生産工程に取り入れることで、信頼性の向上を図っている。同社がDBT(Die-hard Burn-in Technology:ダイハード・バーンイン・テクノロジー)と呼ぶ技術は、DDR2メモリーの品質チェック時に、高温多湿の負荷をかけた状況で一定時間動作チェックを行うバーンインとも言われる負荷試験を行なうことで、メモリーの初期不良を徹底的にゼロに近付けるというものだ。

 同社で日本市場を担当する高橋全氏(Account Manager、Sales Dept)は、「メモリーチップは性能や信頼性面でバラツキがあるもの。ところが、こうしたバラツキは一定時間動作をさせることで安定することがある」と説明する。身近な例に例えるならば、新車を購入したときに、ある程度の距離はエンジンの回転数を抑えて慣らし運転をした方がよいとされることに似ている。

GeILで日本市場を担当する高橋全氏。DBTによるメモリーモジュールの信頼性向上について語ってくれた

メモリーチップやメモリーモジュールにも初期不良はつきまとう。そこで、モジュール生産後、すべての製品に負荷試験を施すことで初期不良をゼロに近付けるのがDBTの狙いだ

 しかし、一つひとつのメモリーモジュールを負荷試験にかけることは非常に手間がかかる。そこで、同社は「最大1000枚のモジュールを同時に負荷試験にかけられるよう、独自のテスト機器を開発したことで、ハイエンド製品だけでなく、メインストリーム製品にも信頼性が高い製品を市場供給できるようにした」と高橋氏は説明する。

 とはいえ、チップセットやCPUの違いでDDRメモリーの互換性にも影響が出てくる。このため、同社ではDBT試験の後に「各モジュールの互換性テストを行なってから出荷している」と、信頼性の追求に妥協を許さない。同社はDDR3モジュールに関してもDBTの適用を進めているが「現時点では、各メモリーベンダーのチップ特性やシステム要件など、独自テストシステムの構築に要する情報が不足している」(高橋氏)ため、導入にはもうしばらく時間がかかる見通しだ。

独自のテストボードの開発により、大型の恒温層で同時に1000枚の負荷試験を実現するDBTテスト装置

DBTテスト装置。現在はDDR2メモリーのみに対応するが、サーバー/ワークステーション向けやミリタリースペックなど、用途に応じたセッティングもできる

ハイエンド製品だけでなく、メインストリーム製品においてもDBTによる信頼性向上を実現した市場を展開。DBTテストが施された製品は、パッケージに「DBT」のマークが印刷されている